四代目中村雀右衛門
黛三五郎
東宝創立二十周年記念映画として清川峯輔が製作に当たったもので、村上元三の原作を「清水の次郎長伝」の三村伸太郎が脚本を書き、「上海の女」の稲垣浩が監督に当っている。撮影は「足にさわった女(1952)」の安本淳。出演者の主なものは、「慶安秘帖」以来の大谷友右衛門、「勘太郎月夜唄」の市川段四郎と二本柳寛、「上海の女」の山口淑子、「振袖狂女」の山根寿子、「丘は花ざかり(1952)」の沢村貞子、「生きる」の志村喬その他の助演者。
慶應三年、江戸深川越中島で将軍上覧のホイッスル砲の実弾射撃が行われた日、三番組の砲手黛三五郎は不敵にも酒気をおびて操作し、組頭庄田杉之助の取なしで事なきを得た。しかし生まれつき大砲好きの黛は砲術で身を立てようとしていたが持前の豪胆がわざわいして遂に長崎へおちて、花火屋におちぶれた。ある日港のごろん棒との渡り合いで一人を軌りすてたが、彼も傷を受けてギヤマン亭のマダム鈴江の介抱をうけた。鈴江は華僑王朱明の愛妾だったが、彼が帰国するに際して彼の持船「サン・ジョアン號」の売却を托された。この噂を聞いた幕府方は庄田杉之助をつかわし、勤王方からは高杉晋作・桂小五郎・伊藤俊輔・坂本龍馬たちが、この船を手に入れようと長崎へ殺到した。庄田は昔のよしみで黛に船のあっせんを頼み彼を砲手に仕立ててやると約束した。黛は高杉を亡き者にしたらと思い込んでその宿所を襲うが、かえって高杉に勤王を説かれる。鈴江と黛とは相愛の仲となっていたので、遂に船を高杉たちへ売り渡した。「サン・ジョアン號」獲得の祝宴がギヤマン亭で行われた夜、幕府の刺客たちがこの料亭を十重二十重にとりかこんでいた。折から花火をあげるために外にいた黛は、花火によって急を彼等に知らせ、高杉たちは活路をひらいて脱出すると共に、高杉のため娘の盲目を蘭医によって治してもらった海賊船の頭玄五衞門だけが一人残って刺客をふせぎ彼等の剣に倒れた。「サン・ジョアン號」のマストに長州旗がひるがえるのを、新しい生活の門出の鈴江と黛はそろってうれしく眺めた。
黛三五郎
庄田杉之助
高杉晋作
坂本龍馬
伊藤俊輔
桂小五郎
鈴江
小はん
百合
玄五左衛門
王朱明
鶴丸彌次郎
江川太郎左衞門
益田善左衛門
おさく
黄旗屋重兵衛
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