酒井美紀
森田ミツ
ハンセン病と誤診されたことにより、人間としての生き方に目覚めていく孤独な少女の心の成長を描いたヒューマン・ドラマ。監督は「深い河」の熊井啓。原作は、かつて浦山桐郎が映画化した遠藤周作の『わたしが・棄てた・女』で、今回は原作に忠実に熊井自身が脚色。撮影には「深い河」の栃沢正夫があたっている。主演は「誘拐」の酒井美紀と「スワロウテイル」の渡部篤郎。
製綿工場に住み込みで働いている孤独な少女・ミツは、自分と同じような境遇の青年・努と知り合い、彼を愛するようになる。だが、努にとって彼女は行きずりの女でしかなく、彼は彼女の前から姿を消してしまった。それから一カ月後、工場が潰れて場末のバーで働くようになっていたミツは、努と偶然再会する。連絡を絶っていた努をなじろうともせず、ミツはひたむきに彼を愛そうとした。そんな彼女を見て、努も心を許すようになっていく。ところが幸せも束の間、ミツが病気にかかり、大学病院の勧めで地方の療養所に入院することになってしまった。努と別れ、ミツはひとりで北アルプス山麓にある“信愛園”の門を潜る。彼女はそこで、初めて自分がハンセン病であることを知らされた。ハンセン病とは、伝染病、遺伝病と忌み嫌われ、政府からも強制隔離という措置が採られていた病気である。しかし、現代医学ではそれが完治することが分かり、彼女は安心した。園の中の人たちはみな、ミツに親切にしてくれ、とりわけ相部屋の加納たえ子という初老の女性と交友を深めていったミツは、彼女から、園の人々がハンセン病にかかったがゆえに世間から受けた迫害についての話を聞かされる。そうした差別が原因で、たえ子自身も病気が完治した今も園の中でしか生活することができないでいるのだ。ある日、ミツは奥原院長から彼女への診察が誤診であったことを知らされる。喜びに震え、ミツは退院していくが、東京へ向かう電車には乗ることができなかった。自分に親切にしてくれた人たちのことを思った彼女は、園に戻り、婦長らの反対を押し切ってそこで働くことを決心する。正月、ミツに賀状を送った努のもとに、たえ子からの封書が届いた。それはミツの園での生活と、交通事故による彼女の死を知らせるものだった。知らせを受けた努は北アルプス山麓へと急ぎ、彼女の墓に詣でた。
森田ミツ
吉岡努
加納たえ子
知念
上條老人
奥原院長
稲村看護婦長
大学病院教授
シスター山形
西山医師
アパートのおばさん
ヨシ子
監督、脚本
脚本協力
原作
製作
製作総指揮
撮影
音楽
美術
編集
衣裳
衣裳
照明
録音
音響効果
音響効果
助監督
色彩計測
スチール
スクリプター
アドバイザー
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