世界の一流アーティストたちに支持されるドイツの小さな出版社シュタイデル社に迫ったドキュメンタリー。世界を飛び回る経営者のゲルハルト・シュタイデルに密着、デザインから製本まで徹底的にこだわった本が完成するまでを記録する。監督は「エル・プリの秘密 世界一予約のとれないレストラン」のゲレオン・ヴェツェルと、フリーランスの映画製作者として活躍するヨルグ・アドルフ。
ストーリー
書籍の編集からディレクション、レイアウト、印刷、製本、出版までを自社で行ない、他社では見られない総合的なアプローチで本づくりをおこなうドイツの出版社シュタイデル社。今や有名写真家が作品を出版するために何年も待ち、扱うのはノーベル賞作家の新作からシャネルのカタログまでと幅広く、シュタイデル社の本のコレクターは世界中に存在する。そこには自らアーティストたちと綿密な打合せを繰り返し、収録作品、使用する紙、インクの選定まで徹底的にこだわり、本自体をアート作品へと昇華させていく経営者ゲルハルト・シュタイデルの姿があった。ニューヨーク、ロサンゼルス、パリ、カタール……。60歳を過ぎてもなおシュタイデルは精力的にアーティストたちのアトリエへ自ら足を運ぶ。「旅は好きじゃないが、会って打合せをするのがいちばん。2、3ヶ月かかる仕事が4日間で終わる」と写真家ロバート・アダムスのキッチンで打合せの合間に語るシュタイデル。そして保険総額が78万ドルにのぼるヴィンテージプリントを抱えると、カナダ出身の写真家ジェフ・ウォールが待つバンクーバーへと飛び立つ。中東カタールの砂漠の豪華トレーラーで石や土の色を活かした自然な装丁を提案し、パリではショー直前のカリスマデザイナー、カール・ラガーフェルドと次の印刷について話し合う。そんな彼の妥協なき本作りの姿勢は、効率重視の出版業界においてユニークなビジネスモデルとしても注目されている。