監督、撮影
1982年、デトロイトで日本人と間違われ殺された1人の中国人の死をめぐる背景を追ったドキュメンタリー。エグゼクティヴ・プロデューサーはファニタ・アンダーソン、製作はレニー・タジマ、監督はクリスティン・チョイの「悟空、西を眺める」のコンビ、撮影はチョイとニック・ドゥーブ、カイル・キッブ、アル・サンタナが担当。
ストーリー
事件の背景となるのは日本車の進出によって大量の失業者を抱えていたデトロイト。加害者であるイベンスもそんな一人だった。彼は中国系アメリカ人のヴィンセント・チンを日本人と間違えて不満をぶつけ、ついに義理の息子ニッツと共にチンを殴り殺してしまう。その結果、彼には執行猶予3年、3000ドルの罰金の判決が下ったが、その軽い量刑に対し、デトロイトの人口の60%を占める黒人層から有色人種差別に対する抗議の声が上がり、ビンセント・チン事件は単なる殺人事件から大規模な運動にまで発展していった。連邦地裁は新たにイべンスに市民権侵害のかどで懲役25年の実刑判決を下すが、白人人口の多いシンシナティの上告裁ではイベンスは自分をマスコミによる魔女狩りの犠牲者だと訴え、87年ついに彼は無罪判決を受ける。事件の真相は今も謎に包まれたままである。が、チョイとタジマはその犯人捜しをするのではなく、イベンス、チンの母親や友人、目撃者らへの長大なインタビュー、そしてニュースソースなどを織り混ぜる「羅生門」的手法でこの事件の陰にあるさまざまな問題を重層的に構成してみせた。