ゲイリー・オールドマン
ウィンストン・チャーチル
ゲイリー・オールドマンが特殊メイクによって、英国の首相ウィンストン・チャーチルになりきり、第90回アカデミー賞主演男優賞に輝いた歴史ドラマ。第二次世界大戦時の閣議記録を元に、チャーチルの首相就任からダンケルクの戦いまでの27日間が描かれる。チャーチルの妻クレメンティーンに扮するのはクリスティン・スコット・トーマス。
※結末の記載を含むものもあります。
1940年5月、内閣不信任決議により退陣したチェンバレン首相の後任として、政界の嫌われ者であるチャーチルがイギリスの新首相に就任する。第二次世界大戦でイギリスはドイツの脅威にさらされ、チェンバレンらは和平交渉を勧めるが、決して屈しないと徹底抗戦を誓う。そして、フランス・ダンケルクの海岸まで撤退した英国軍の救出作戦を開始する。
ウィンストン・チャーチル
クレメンティーン・チャーチル
Elizabeth Layton
Viscount Halifax
Neville Chamberlain
King George VI
監督
脚本
特殊メイク(ゲイリー・オールドマン)、ヘアデザイン(ゲイリー・オールドマン)
メイクアップ、ヘアデザイン
プロデューサー
プロデューサー
プロデューサー
プロデューサー
撮影
プロダクション・デザイン
音楽
[c]2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved. [c]キネマ旬報社
1940年5月9日~6月4日までの、ドイツがオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フランスへ侵攻したことに対して、イギリスがどのように対応したのかが描かれています。
イギリス国内では、野党労働党党首であるクレメント・アトリーは、挙国一致政権に協力する条件として、ドイツに対して宥和政策をとってきたネヴィル・チェンバレン首相に、辞任を要求します。
ネヴィル・チェンバレン首相は、辞任を決意し、ハリファックス子爵を首相に推薦しようとします。
ハリファックス子爵は、庶民議員ではないこと、宥和政策に反対し、徹底抗戦を考えているウィンストン・チャーチルを排除するために、首相になることを断ります。
ネヴィル・チェンバレン首相は、国王ジョージ6世に、辞任を伝え、後任にウィンストン・チャーチルを推薦します。
国王ジョージ6世は、ウィンストン・チャーチルを首相に任命しますが、納得はしていません。
ウィンストン・チャーチルは首相になりますが、宥和政策を推進するネヴィル・チェンバレン枢密院議長やハリファックス外務大臣から、宥和政策を検討さえしないことを理由に、辞職するように追い込まれます。
ウィンストン・チャーチルが辞職すれば、ハリファックス外務大臣が首相になり、再び宥和政策を進めることができるということです。
イギリスの首相は、庶民院に内閣不信任案が提出され、庶民院で内閣不信任案で可決されると、総辞職するか、庶民院を解散し、総選挙を行います。
イギリスの首相は、庶民院に内閣不信任案が提出されないように、庶民院で内閣不信任案が可決されないように、権力を行使しなければなりません。
イギリスの首相は、閣僚が辞任することをきっかけに、庶民院に内閣不信任案が提出されないようにします。
イギリスの首相は、閣僚が辞任することが避けられないなら、閣外大臣、庶民院議員の支持を得て、庶民院で内閣不信任案で可決させないようにしなければなりません。
ドイツ軍が侵攻を開始している状況では、イギリスの首相は、庶民院で内閣不信任案で可決された場合、庶民院を解散し、総選挙を行う時間はなく、総辞職するしかありません。
ドイツ軍が侵攻を開始している状況では、イギリスの首相は、ドイツ軍と軍事的に戦いながら、イギリスの閣僚や議員と政治的に戦い、ドイツ軍に対して軍事的に勝ち、イギリスの閣僚や議員に対して政治的に勝たなければならないということです。
この間にも、戦局は悪化し続けます。
1940年5月10日、ドイツ軍の装甲師団主力のA軍集団は、小型でガソリンエンジンを搭載したI号戦車、II号戦車で構成され、アルデンヌ森林地帯を抜け、Ju87シュトゥーカ急降下爆撃機による正確な支援爆撃を受けて、ムーズ川を渡り、敵国のガソリンスタンドを補給に利用し、早い速度で進軍し、連合国軍の背後に回り、攻撃することで、連合国軍を総撤退させ、英仏海峡を目指します。
ドイツ軍の空挺部隊は、防御陣地に降下して、爆破し、歩兵主力のB軍集団が防御陣地を制圧し、ベルギーとオランダに侵攻しました。
ドイツ軍のC軍集団は、マジノ線に侵攻し、マジノ線の要塞群に立てこもるフランス軍守備隊を釘づけにしました。
1940年5月15日、ドイツ軍の歩兵主力のB軍集団は、オランダを占領しました。
1940年5月16日、ドイツ軍の装甲師団主力のA軍集団がイギリス軍とフランス軍の背後へ回り込んだことを知らされたイギリス軍とフランス軍は、総退却を開始し、機動力に勝るドイツ軍のA軍集団にパリ方面への退却を阻まれ、イギリス海峡方面へと退却しました。
1940年5月20日、ドイツ軍の装甲師団主力のA軍集団は、英仏海峡に到達し、イギリス軍とフランス軍を包囲しました。
1940年5月26日、ドイツ軍の装甲師団主力のA軍集団は、カレーを陥落しました。
1940年5月28日、ドイツ軍の歩兵主力のB軍集団は、ベルギーを占領しました。
ウィンストン・チャーチルは、ダイナモ作戦、いわゆるダンケルク撤退戦を行い、庶民院、ラジオ、閣外大臣、再び庶民院で演説をすることで、軍事的、政治的な窮地を切り抜け、イギリスを勝利に導き、戦勝国として、国際連合安全保障理事会で拒否権を持つ常任理事国にしました。
戦争映画ではありますが、戦闘シーンは皆無です。
闘いの武器は言葉。言葉だけを武器に、世界大戦を勝利に導いたチャーチルの物語です。
指導者たるものの胆力と努力、そして奥さん以外には決して見せない苦悩が観客に痛いほど伝わってきて、勇気を貰える、そんな作品でした。
当時の国際情勢は、現代のわが国を取り巻く国際情勢とソックリ二重写しに見えるだけに、いろいろと考えさせられる点が多かったです。
大陸には強大な独裁主義国家があります。
また大陸の端には友好国があるものの、その友好国は優柔不断でヘナチョコで大嘘つきで、カラキシ頼りになりません。そういう情勢下なのです(フランスのことです)。
チャーチルは経験しました。
いちばん手助けを必要としている瞬間に、同盟国であるはずのアメリカからも冷たく突き放されてしまう仕打ちを。
結局のところ、島国の住人は、単独で対峙する決意を試されるのでした。
私たちにもまた、大陸の強大な独裁主義と対峙する決意を試される瞬間が刻一刻と近づいているからこそ、この映画に深く共感するのだと思います。
その時に、チャーチルのような胆力の座った指導者を、私たちは持ち得ているのでしょうか。
※告知※ 今後、私のレビューは「映画コム」のほうに順次移行し、ムービーウォーカーに書いていたものは、移行終了後に削除することにしております。ご了承ください。
チャーチルの組閣から対ドイツへの徹底好戦の宣言までの苦悩を描いた作品です。限られた期間だけ描いているので、題名は仰々しく感じました。主演のゲイリー・オールドマンはアカデミー賞で主演男優賞を受賞しましたが、なぜ受賞したのか疑問です。チャーチルに似ている点が評価されたのかもしれないですが、言動は役者なら当然で容姿はメーキャップの力だと思います。ナチスから世界(ユダヤ人)を救ったチャーチルを無難に描けたため、ほぼ白人やユダヤ人のアカデミー賞選定委員が肩入れして評価したとしか思えません。