のん
北條すず
2016年に公開され、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第一位を受賞した「この世界の片隅に」に約30分の新規シーンを追加した別バージョン。主人公すずとリンとの交流、妹すみを案じて過ごすなかで迎える昭和20年9月の枕崎台風のシーンなどが追加された。新しい登場人物や、これまでの登場人物の別の側面なども描かれ、すずたちの心の奥底で揺れ動く複雑な想いを映し出す。前作に引き続き、主人公すずをのんが演じるほか、すずの夫・周作を細谷佳正、周作の姪・晴美を稲葉菜月、周作の姉・径子を尾身美詞、すずの旧友・哲を小野大輔、すずの妹・すみを潘めぐみ、すずと仲良くなる女性リンを岩井七世といったボイスキャストも続投。監督・脚本は、前作で第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞を受賞した片渕須直。
※結末の記載を含むものもあります。
昭和19年、日本が戦争のただ中にあった頃。18歳で広島から呉の北條家に嫁いだすず(声:のん)は、夫・周作(声:細谷佳正)とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。だが戦況は次第に悪化、すずたちの生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。そんなある日、すずは迷い込んだ遊郭でリン(声:岩井七世)と出会う。境遇は異なるが、呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、すずは周作とリンとのつながりを感じ取るのだった。昭和20年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。そして昭和20年の夏がやってくる……。
北條すず
北條周作
黒村晴美
黒村径子
水原哲
浦野すみ
白木リン
北條円太郎
北條サン
森田イト
堂本
刈谷
知多
浦野十郎
浦野キセノ
小林の伯父
小林の伯母
監督、脚本、監督、脚本
プロデューサー、プロデューサー
原作、原作
企画、企画
音楽、音楽
監督補、画面構成、監督補
キャラクターデザイン、キャラクターデザイン、作画監督、作画監督
美術監督
特別出演(声)
[c]2018こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会 [c]キネマ旬報社
あの「君の名は。」が大・大・大ヒットした2016年に静かに公開して、口コミでその「傑作」であることが広がり、超ロングランしている「この世界の片隅に」に約30分の追加シーン(原作の漫画にはちゃんとあるシーン)を加えた「完全版」的作品。 特に友人であり、何かあることに意識をしていた「リン」との絡みが追加されたことで、すずの人間らしさ(強い面も弱い面も・・)がより強調されます。 その他にもすずの周りを取り巻く人物のエピソードも増えているので、時代背景がより詳細になり、当時の生活がより伝わるようになっていました。 まあ、細かいことは良しとして、前作の「この世界の片隅に」も完全版の今作も、戦争というある意味メチャクチャ特殊な環境下の中であっても、今と変わらない「今を生きる」があり、そして、人生とは良い事も悪いことも誰にでもあって、それでも続いていく・・・ということを鑑賞後に自然と感じることができることです。 そして、相変わらず、コトリンゴの音楽もいいですね! 鑑賞日がクリスマスイブでしたが、映画館からの帰りの道中、ジングルベルではなく、頭の中でエンディング曲がずっと流れていました・・・
★スコアが5.0では足りない。10も20も与えたい。 2016『この世界の片隅に』に38分を足して「新作」となった本作。 単なるボーナスカットの増ではなく、「周りの人々のいくつもの片隅」が描かれ、それが効果的に「すずさん」を彩り、様々な感情や女性としての内面まで引き出して、すずさんの身近な人間らしさをより感じさせてくれました。 また、入市被曝した人々、友人のリンさんを空襲で亡くしたなどのエピソード、背後の雑踏の言葉も増してより時代が加わって、「時代」「戦争の悲惨さ」もより強く感じさせてくれました。 音響効果がバージョンアップし、爆撃の迫力も増しました。 新旧二作とも、芯となる「どんな時代においても、懸命に生きていた人々はいた」ことを伝えているという部分は、変わらなかったと思います。 どこかの新聞評にあった「反戦のために作られた」映画ではなく、この中から「反戦の気持ちが湧くことがある」のだと思います。 観た人の様々な心の引き出しにある感情を刺激し、観た人の中で完成する作品でした。