佐藤浩市
伊崎利夫
ジャーナリストの門田隆将が、90人以上の関係者への取材をもとに描いたノンフィクション本「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を映画化。2011年3月11日、午後2時46分に起きた東日本大震災で制御不能となった福島第一原発の暴走を止めるため、命を懸けて原発内に残って戦い続けた作業員たちの姿を描く。佐藤浩市が福島第一原発1・2号機当直長の伊崎利夫を、渡辺謙は福島第一原発所長の吉田昌郎を演じ、『許されざる者』以来7年ぶりに共演する。
空前のスケールで描く“真実”の物語を徹底解剖
東日本大震災時の福島第一原発事故の真実を描く映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)。佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、安田成美らが結集し、日本映画史上最大級のスケールで映画化した本作を、多彩なコラムやインタビューで徹底解剖!
※結末の記載を含むものもあります。
2011年3月11日、午後2時46分。マグニチュード9.0、最大震度7もの巨大地震が起こした大津波に福島第一原子力発電所は襲われる。浸水による全電源喪失で原子炉の冷却装置が停止し、格納容器内の圧力が急上昇。刻一刻と迫るメルトダウンを回避すべく、原発内に残った50人の作業員たちは互いに協力し、容器中の空気を抜き圧力を下げる“ベント”という危険な作業に取りかかる。
伊崎利夫
吉田昌郎
前田拓実
浅野真里
野尻庄一
大森久夫
平山 茂
井川和夫
伊崎遥香
滝沢 大
伊崎智子
内閣総理大臣
加納勝次
福原和彦
竹丸吾郎
小野寺秀樹
原子力安全・保安院院長
矢野浩太
本田彬
工藤康明
内藤慎二
西川正輝
宮本浩二
小宮弘之
山岸純
樋口伸行
辺見秀雄
ジョニー
佐々木明
五十嵐則一
望月学
内閣官房長官
原子力安全委員会委員長
首相補佐官
経済産業大臣
前田かな
福島民友新聞記者
松永
伊崎敬造
監督
脚本
原作
製作代表
エグゼクティブプロデューサー
企画
企画プロデュース
プロデューサー
撮影
照明
美術
音楽
特撮・VFX監督
製作
製作
製作
製作
製作
製作
製作
製作
製作
製作
製作
サウンドデザイナー
録音
編集
キャスティング
技術指導
ラインプロデューサー
宣伝プロデューサー
音楽プロデューサー
スクリプター
衣装
ヘアメイク
演奏
演奏
演奏
[c]2020『Fukushima 50』製作委員会 [c]キネマ旬報社
CGによる再現がすばらしく、全体として良い仕上がりの映像でした。
ただ、予備知識なしでこの映画を見たら、吉田所長が、ただひたすら怒りを爆発させるばかりの映画だと思うことでしょう。なぜこの所長の下で多くの勇者たちが団結したのか、この映画からは理解できないのが難点でしょう。
これはおそらく原作に問題があると思います。
私も国会事故調査委員会の報告書を大部分、読破しましたが、(たぶん書籍数十冊分の分量がありますが)、吉田所長に対するヒアリング全文から滲み出ていた、所長の健全で優秀な人間性。この人の下で働くことは幸せだな、と、読むものに感じさせる魅力を、渡辺謙演じる吉田所長像から見つけられなかったことが残念です。
上記報告書は、多くの政治家に対しても何時間ずつ掛けてヒアリングをしています。発言を逐語的に文章化したものなので、残酷なまでに政治家一人一人の人間性や品性があぶり出しになっていました。
菅直人首相や枝野官房長官など、人格的には、ほとんど0点だと私は判断しましたが、(なかでも海江田大臣は飛び抜けて酷いですが)、そのような中で、中国から帰化した(きっと苦労も重ねてきたにちがいない)福山副長官の人間性には、私はかなりの驚きと高評価をしたものです。
しかし福山副長官に相当する登場人物が、この映画では官邸側に設定されておらず、「官邸=低能の巣」という画一的な図式に塗りつぶされていたのが、ちょっとフェアではないとは感じました。
実はこの映画、私は観るつもりはなかったのです。
しかし、菅直人の腰巾着みたいなライターが「映画の中での菅首相の描き方が酷過ぎる」という趣旨の記事を書いていたので、そこまで擁護するのなら、それじゃあ鑑賞してみようか、と思い立ったのです。
腰巾着による非難記事とは裏腹で、佐野史郎さんは、菅首相の「人間性と品格」とを、きわめてリアルに正確に演じていました。
菅直人が自分の腰巾着に頼んで記事を書かせたのだろうと推察しますが、こういうことを突発的に行う衝動を心の闇の奥底に抱えている点も含め、「人間の屑の屑」を総理に選んでいだ日本の不幸が、よくわかります。
国会事故調のヒアリングに対して、吉田所長は終始冷静に対応をしていましたが、ただ一カ所だけ、感情を高ぶらせる部分があります。
私のジャマをした人たちに、どうか仕返しをしてください、と、死を目前にしていた所長は、ヒアリング担当官に訴えたのです。
この映画によって、吉田所長の仇が討てていると良いのですが、菅の腰巾着の雑文を見るかぎり、まだまだもっと打たねばならないのだろうな、と感じる次第でした。
※告知※ 今後、私のレビューは「映画コム」のほうに順次移行し、ムービーウォーカーに書いていたものは、移行終了後に削除することにしております。ご了承ください。
2011年東日本大震災当時、福島原発の報道がされた時、自分たちの身にも危険が迫っていたとは思いもしなかった。映画を観て初めて、チェルノブイリよりも大きな事故と隣り合わせだったと知った。命がけで死を覚悟して戦った人たちが私たちを救ってくれたことに頭が下がる思いです。知らされない事実に体が震えた。どうして原子炉の圧力が減少して最悪の事態がまぬがれたのか今でもわからないとの言葉は、まだまだ人にはわからないことが多くあるということで、今でも原発が日本の各地にあることを思うと、どうしようもない不安を覚える。 事実をよく知らされないまま避難を余儀なくされ、住み慣れた居場所を奪われた人たちの気持ちを思うと胸が痛い。 この人たちが生きているうちに、住めない町は住める町になるだろうか。