アカデミー賞3冠の『ROMA/ローマ』、Blu-ray特典で迫るA・キュアロン監督がこだわり抜いた舞台裏

第75回ヴェネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞を受賞し、第91回アカデミー賞では作品賞を含む10部門にノミネート。外国語映画賞と監督賞など3部門に輝いたアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』が、ついにBlu-ray化。6Kの65mmデジタル・シネマカメラで撮影された高精細な映像と、そこに映しだされる緻密に再現された70年代のあまりにも美しい情景。これらが大きな話題を集めた本作の、撮影の舞台裏に様々な角度から迫った約174分に及ぶ特典映像が盛りだくさんに収録されている。

本作の舞台は政治的混乱に揺れていた1970年代初頭のメキシコシティ。ローマ地区に暮らす中産階級の家で家政婦として働き、子どもたちの世話や家事に追われる日々を送っていたクレオは、ある時フェルミンという青年と出会い恋に落ちていく。このクレオのモデルとなったのは、キュアロン監督の幼少時代に彼の家で働いていた家政婦の“リボ”ことリボリア・ロドリゲス。本作の公開時にMovieWalkerで実施したSkypeインタビューでキュアロン監督はリボについて「僕が小さい時に一番強い絆を持つことができた相手」だと振り返り、「自分のルーツと再びつながりたい」と本作を作った経緯を明かしていた。

まさにリボへのラブレターとも言える本作の劇中には、キュアロン監督の幼少時代の思い出と、ありとあらゆる記憶が鮮明に投影されている。映像特典に収められたドキュメンタリー映画『「ROMA/ローマ」完成までの道』では、当時住んでいた家の内装から、人々の服装、街の景観から生活音までも忠実に再現しようとする強いこだわりと、記憶を辿りながら自身の“過去”に触れていくキュアロン監督の姿が映しだされていく。

「撮影を進めていくうちに規模も熱意も膨れ上がった」と語るキュアロンは大規模なセットを組み、人通りの多い街並みを再現すると、現存しない路面電車や背景に映り込むビルなどはVFX技術によって付け足していく。対照的にクライマックスの海のシーンでは「なんとしても正しく撮りたい」とリアルさを追求し、太陽が望んだ位置にあるタイミングで撮影が進められるように入念に準備を重ねていく。自身の思い出という“感覚”を大切にしながら、妥協することなく映画に真実味を与えようとするその姿からは、キュアロン監督の本作へ注ぎ込む情熱を強く感じることができよう。

また演技初挑戦ながらクレオ役を演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたヤリッツァ・アパリシオをはじめとしたキャスト陣や、スタッフたちへのインタビューを通してキュアロン監督のヴィジョンを具現化するために力を注ぐ人々に迫る「撮影の舞台裏」。最新鋭の技術を用いて“映画”としての臨場感を追求した映像や音響の秘密にフォーカスをあてたメイキング、そして上映設備のアップデートが必要となる本作の上映のために、製作チームがメキシコ各地を渡り歩いた上映ツアーの様子も収められている。