アカデミー賞3冠の『ROMA/ローマ』、Blu-ray特典で迫るA・キュアロン監督がこだわり抜いた舞台裏
Netflix映画として2018年11月に全世界同時配信が行われ、その後日本を含む世界各国で劇場上映が実現した本作だが、キュアロン監督は初めから劇場上映を念頭に入れていたことを明らかにしている。昨今の新型コロナウイルスによる世界的な映画館の休業によってその流れは変わりつつあるが、いまなおNetflixなどの配信サービスと従来の劇場上映との関係性についての議論は随所で見受けられている。それでもキュアロン監督は「多様性を持つことで映画は進化していく」と、好意的な姿勢を貫く。映画作家のクリエイティビティを尊重されたことによって、映像から音響に至るまで既存の映画技術の最高レベルが贅沢に結集した、といって過言ないだろう。
クライマックスの海岸のシーン、溺れた子どもを助けるために海の中へと突き進んでいくクレオに迫る波しぶきと、画面の手前に跳ねる水しぶきのひとつひとつまで、鮮明に確認することができる。この水辺に立ちずさむクレオの姿は、今回のBlu-rayのパッケージデザインにも採用されているが、このデザインは今年2月にアメリカで発売されたクライテリオン版のデザインをローカライズされたものである。世界中の珠玉の名作たちを、最高の品質でソフト化してきたクライテリオン・コレクションは、映画ファンなら一度はその名前を聞いたことがあるのではないだろうか。
表面はもちろん、背表紙にいたるまで洗練されたパッケージデザインは眺めているだけでワクワクしてしまう。また封入特典のブックレットも、クライテリオン版の特典として収録されていたヴァレリア・ルイセリとエンリケ・クラウゼの論評が翻訳されており読み応え抜群。特典のメイキングドキュメンタリーのなかでキュアロン監督が「完成までの過程が重要」だと語っているように、すでに劇場やNetflixで本作を鑑賞したという人も、このBlu-rayのメイキングをチェックしてから本編を観ると、きっとこれまでとは一味違う印象を抱くことになるだろう。
是非とも入手して、『ROMA/ローマ』という1本の映画をより深く、多面的に味わい尽くしてみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬
Blu-ray 5,000円+税 BIXF-0333
発売・販売元:株式会社ハピネット
カラー/本編 135 分/2 層/16:9 [1080p Hi-Def] スコープサイズ/音声:スペイン語 ドルビーTrueHD ドルビーアトモス/1.日本語字幕 2.英語字幕
【封入特典】
・ブックレット(20P)
【映像特典】(約174分)
・「ROMA/ローマ」完成までの道
・撮影の舞台裏
・「ROMA/ローマ」の映像
・「ROMA/ローマ」の音響
・「ROMA/ローマ」人々をつなぐメキシコ上映ツアー
・予告集(日本版予告・日本版ティザー)