『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督、英国の名優サー・イアン・ホルムを追悼【全文】|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督、英国の名優サー・イアン・ホルムを追悼【全文】

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『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督、英国の名優サー・イアン・ホルムを追悼【全文】

ピーター・ジャクソン監督がイアン・ホルムへの追悼文を発表
ピーター・ジャクソン監督がイアン・ホルムへの追悼文を発表写真:SPLASH/アフロ

ピーター・ジャクソン監督が、6月19日に88歳で亡くなったサー・イアン・ホルムに宛てた弔文を寄せている。サー・ホルムは「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」シリーズでビルボ・バギンズ役を演じている。

Facebookに投稿された、「すばらしきサー・イアン・ホルム」と題された弔文は、「サー・イアン・ホルムの訃報に深い悲しみを感じています。イアンはとても気前がよく愉快な人でした。もの静かだけど大胆で、その瞳には輝きが宿っていた」から始められ、『ロード・オブ・ザ・リング』(01)の撮影初日のことを回想する。「撮影初日、カメラが回る前に袋小路屋敷のセットに立っていると、彼は私をセットの片隅に連れて行き、“テイクごとに違う演技を試してみるけど、心配しないで”と言いました。“もし、5、6回のテイクを撮った後に君が望む演技が見られなかったら、具体的な指示を出して欲しい”、と。そして、まさにその通りになりました。信じられないことに、彼の変化に富んだ演技はどれもすばらしかった。具体的な演出はほとんど必要ありませんでした。編集の段階で、彼は驚くほど幅広い選択肢を与えてくれました」と、撮影を思い返す。

またある日は3、4歳の子どもたち相手にビルボが冒険譚を聞かせるシーンを撮影した。「ビルボの話を聞きながら、その瞬間にドラマチックに反応する子どもたちを捉えた角度も必要でした。しかし、様々な角度から撮影するうちに、幼い子どもたちはすぐに飽きてしまうので、同じ話を何度も聞くことはできないことに即座に気付きました。私はイアンに、子どもたちの注意を引きつけるためには、テイクごとに少しずつ物語を変えていくべきだと提案しました。余計なものを追加したり、作り話をしたり…。“編集でなんとかするから心配しないで”、とも伝えました」。
そして、ジャクソン監督は、カメラ位置を変更する15分から20分の待ち時間にも子どもたちを飽きさせないために、別の物語を語っていても良いとサー・ホルムにお願いした。「彼はその通りに実行し、無事撮影を終えることができた。子どもたちがセットを離れ、スタッフが次のシーンに移る際にイアンは言った。“人生でこんなに一生懸命働いたことはないよ!”と」。

最後のレッドカーペットは2019年4月に行われた「指輪物語」原作者の半生を描いた『トールキン 旅のはじまり』
最後のレッドカーペットは2019年4月に行われた「指輪物語」原作者の半生を描いた『トールキン 旅のはじまり』写真:SPLASH/アフロ

それから10年後、『ホビット 思いがけない冒険』(12)の制作が決まった際にもサー・ホルムに再度ビルボ役を演じて欲しいと出演を打診したが、彼の返事は「パーキンソン病に冒されていてセリフを覚えることができないし、歩行もままならないのでニュージーランドには行くことができない」というものだった。プライバシーを重んじる彼は、実質上引退しているけれど公表はしていない、とも伝えたという。ジャクソン監督は、サー・ホルム演じる老齢のビルボから、マーティン・フリーマンの若きビルボに移行していく名案を練っていたため、とてもショックを受けたと書いている。
そして、サー・ホルムがどのように最後の出演を果たしたのか、下記からはジャクソン監督の言葉で説明する。

■ピーター・ジャクソン監督のサー・イアン・ホルムへの弔文原文
『The Wonderful Sir Ian Holm』

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