工藤遥「何度も壁を超えてきた」11歳でのモー娘。加入から『のぼる小寺さん』で初主演を飾るまで
「ボルダリングは、嘘のないシーンを目指しました」
本作で特筆すべき点は、ボルダリングのシーンが、見ていて引き込まれるほど美しいことだ。工藤は撮影期間含めて約4か月間の猛特訓を経て、見事に難易度の高いボルダリングのスキルをマスターした。
「最初に古厩監督から『ボルダリングのシーンはなるべく吹替えなしでやりたい』と言われました。小寺さんは、東京都のボルダリング選手権で2位を獲るくらいすごく強い選手ですが、『同じくらいのレベルまでいきたい』と」。
これは無茶ぶりにも思えるほど。
「その時、すごく難しい要求をされるなと思った反面、それだけ期待してもらっていると感じたので、ただただ一心不乱に練習しました。東京2020オリンピックから、スポーツクライミングが正式種目になったし、ボルダリングをされている方や注目されている選手の皆さんが見ても、嘘のないシーンを目指すこと。そこは監督やボルダリングの先生とも常々話し合いました」。
伊藤が演じた近藤は卓球部員ということで、伊藤も卓球の猛練習を行って撮影に挑んだそう。
「監督はスポーツのシーンになると、なかなかカットをかけてくれません。とにかくボルダリングと卓球のシーンは両方カット数が多かったので、2人ともガチで汗をかいて、ハアハア言いながらやっていました」。
小寺さんと近藤との初々しいやりとりも胸キュンだ。
「実は、小寺さんと近藤は一緒にいるように見えて、劇中での会話はすごく少ないんです。小寺さんは、近藤に見つめられていても気づいていないし。共演シーンが増えていき、伊藤さんとはすぐに仲良くなれたのですが、逆にキャラクターとしての距離感はなかなか縮まらない。そのおもしろさはありました。お互いに、あと一歩が踏み込めないという絶妙な距離感がすごく歯がゆいというか、ピュアさがにじみでていて、小恥ずかしかったです(笑)」。
いい意味で容赦のない古厩監督。ボルダリングのシーンでは「出来るか出来ないかギリギリの要望」を出されたが、工藤は持ち前のド根性と負けん気で、果敢に食らいついていった。
「特に、ホールドからホールドへ飛び移る技が難しかったです。跳ぶのが怖いし、腕力も必要です。もちろん、プロが見たら、飛んだり跳ねたりしていない場面のほうが難しいと言われるかもしれないですが、やはりボルダリングの派手さやスポーツとしてのすごさを見せるには、どうしてもあの技が必要でした」。
そのシーンだけは、トライし続けるものの、心が折れそうになったこともあったそう。
「監督に何度も『これだけは、本当にできないかもしれないです』と言いました。例えできなくても、すごそうに見える別の方法を取ってくれるのではないかと、甘い期待を抱いていたのですが、監督からは変わらず『跳べ』と言われました。その後、諦めずに練習した結果、なんとかやれたんです。漫画にもありますが、周りから『頑張れ!』と声をかけてもらって、その声に助けられた気がします。できた時は、本当に皆さんに感謝しました」。