予測のつかないアメリカの劇場再開…大型作品はストリーミングサービスの残留装置に?
逆の動きがストリーミングサービスで起きている。5月27日にサービスを開始したワーナー系列のストリーミングサービス、HBO Maxでは当初は7月で配信終了予定だった『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16)、『ジャスティス・リーグ』(17)、『ワンダーウーマン』(17)といったDCコミック作品の配信を2020年末まで延長した。HBO Maxスタート時の計画では、DCコミック作品は毎月タイトルを入れ替えて配信する予定だった。
だが、5月にザック・スナイダー監督版の『ジャスティス・リーグ』を2021年にHBO Maxで配信することが発表になり、ストリーミングのプラットフォームを宣伝の場にするよう方向転換したものと見られている。2017年の『ジャスティス・リーグ』は、DCエクステンデット・ユニバースの総決算としてDCのヒーローたちが揃う作品になるはずだったが、スナイダー監督が不慮の事故で途中降板、『アベンジャーズ』(12)のジョス・ウェドン監督が後を継いで完成させた経緯がある。2021年に配信される『ジャスティス・リーグ』スナイダー監督版は、再編集やVFXを追加するなど作業が進められているところだ。
ストリーミングサービスのビジネスモデルは、毎月の課金(サブスクリプション)をできるだけ長く続けてもらうこと。劇場公開モデルの公開日に向けて宣伝し瞬間風速を上げ、最大値を出すビジネスとは異なる。例えばディズニープラスで『ハミルトン』を観た視聴者が『モアナと伝説の海』や『メリー・ポピンズ・リターンズ』を継続して鑑賞すればサイトにとどまる時間が延びる。
ストリーミングサービスに投下する人気作品は、屋台骨となるテントポールではなく、細く長くサービスにとどまってもらうための撒き餌になる。コロナ禍の収束が予測できない今、グループ企業にストリーミングサービスを持つスタジオがこのような判断をするのは容易に想像できる。
アメリカの映画館再開状況はいまだに予想がつかず、映画産業の都ロサンゼルスの映画館はビジネス再開が許されたいまも、多くが閉館したまま。今後も、『ハミルトン』や『スポンジ・ボブ』のように、ストリーミングサービスやVODを新しいホームとして選ぶ作品も増えていくと思われる。
文/平井伊都子