トム・クルーズよりも人気だった!?青春映画のスター、エミリオ・エステヴェスが代表作を更新
その後、勢いにのったエステヴェスは、演じるだけでなく作り手側にも興味を示すように。23歳の時に『BAD 傷だらけの疾走』(85)で脚本を手掛け、25歳の時には『ウィズダム 夢のかけら』(87)で監督デビュー。その後は弟チャーリーと共演し自分で監督もした『メン・アット・ワーク』(90)や、「ヤングガン」や「張り込み」シリーズ、『飛べないアヒル』(92)を1作目とした「D2」シリーズなどで着実にキャリアをつむ。
『ミッション:インポッシブル』(96)では、子ども時代からの友人で、『アウトサイダー』でも共演したもトム・クルーズと再共演を果たしている。(ちなみにトムは『ヤングガン』(88)にカメオ出演していた)。この間、弟チャーリーのほうが有名になっていたこともあり、エステヴェスの役者としての精彩は少しずつ失せていったが、彼の創作意欲は衰えることはなかった。ロバート・F・ケネディ大統領候補暗殺事件があったホテルに居合わせた人々を描く『ボビー』(06)や、父マーティンを主演に迎えたロードムービー『星の旅人たち』(10)など意欲的な作品を手掛け、監督としての確かな手腕を磨いてきたのだ。
『パブリック 図書館の奇跡』は、エステヴェスの8年ぶりの監督作であり、役者としての映画出演は『星の旅人たち』以来となる。本作の構想はなんと11年で、ロサンゼルス・タイムズに掲載されていた“ある公共図書館の元副理事によるエッセイ”から着想を得たという。これまでの創作ペースを考えても、時間をかけて納得いくものにしたいという思いが強かったに違いない。そして偶然とはいえ興味深いのは、本作の舞台が『ブレックファスト・クラブ』と同じ図書館ということ。一見はお気楽な体育会系ながら、内に父親との確執や将来への不安などを抱えていたあの少年の姿が、時を経て『パブリック~』の、気のいい図書館員に見えて、様々な挫折を経験している中年男の姿に重ねるのも一興だ。困窮するホームレスのために、自ら勇気を振り絞って立ち上がるさまは感動的で、年齢を経て加わったエステベス自身の渋みと、円熟した演技力をしみじみと味あわせてくれる。
若くしてスター街道を上り詰めたエステヴェスが、紆余曲折を経てたどり着いた本作。クリエイターとしての厚みを増しただけではなく、持ち前の甘いマスクとカリスマ的な存在感も健在。エステヴェスの新たな代表作となった、心に染み入るヒューマンドラマを堪能してほしい。
文/トライワークス
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