ステイサムvs巨大ザメ映画を成功に導いた!『MEG ザ・モンスター』に見るハリウッド映画における中国の存在
普及の名作からトンデモな作品まで、一つのジャンルとして確立されているサメ映画。夏真っ盛りの8月へと突入し、その注目度もグッと上がっており、8月8日にはフジテレビ系列にて『MEG ザ・モンスター』(18)が地上波で初放送された。
この『MEG ザ・モンスター』は、全世界興収5億3000万ドル超という数字を叩き出し、『ジョーズ』(75)を抜いてサメ映画歴代No.1に躍り出た、まさにモンスタームービー。内容はジェイソン・ステイサム扮するレスキューダイバーのジョナスが、海底で身動きが取れなくなった探査艇を救助しようする中で、200万年前に絶滅したはずの体長23mの古代サメ、メガロドンと遭遇してしまい…というもの。
超巨大なサメと人類最強クラスの男ステイサムを戦わせる…というこの企画を実現させるために、なんと1億3000万ドルという莫大な制作費が投入されている本作。そこで一役買っているのが中国の資本だ。
中国の映画界と言えば、国産作品を優遇するため外国映画の輸入に制限をかけており、海外の作品にとっては長らく狭き門となっていたが、その規制が緩まったこともあり、市場として大きな存在感を放っている。そういった動きもあり『トランスフォーマー/ロストエイジ』(14)や『グレートウォール』(16) といった作品の製作国に中国が名を連ねたり、2016年1月に「ゴジラ」シリーズなどの制作会社レジェンダリー・ピクチャーズを大連万達グループが買収したりと、ハリウッドと中国の距離は年々近くなっている。
当然と言えば当然だが、物語の舞台が中国となるなどところどころにエッセンスが散りばめられている。本作もご多分に漏れずで、例えば、この作品はスティーヴ・オルテンによる「Meg: A Novel of Deep Terror」という小説が原作だが、物語の舞台がサンディエゴ近辺の太平洋から、中国有数のビーチリゾートとして知られる「三亜湾ビーチ」に変更されており、中国の海洋研究所でストーリーが展開していく。
アレンジの中でも特に顕著なのがヒロイン周り。原作では日本人だったヒロインを、映画ではリー・ビンビン演じる中国人の博士に変更。本作にはステイサム演じる主人公の元妻も登場するのだが、その2人の過去や関係性を深掘りするよりも、このヒロインと家族の物語や主人公との関係、彼女の人物像などがより深く描かれ、彼女に存在感を持たせているのだ。ドラマ「HEROES」でおなじみのマシ・オカ扮する日本人クルーも登場するのだが、彼の顛末など描かれ方の違いにも注目してみるとおもしろいかもしれない。
『カンフーパンダ3』(16)を超え、米中合作映画としては史上最高の興収を記録する成功を収めた本作。米中の合作の理想的なバランスが保たれた一本とも言えるので、そういった観点からも作品を楽しんでみてはいかがだろうか。
文/トライワークス
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