【レビュー】J・フォックスとJ・ゴードン=レヴィットが共闘!『プロジェクト・パワー』はNetflixらしい充実の娯楽映画

コラム

【レビュー】J・フォックスとJ・ゴードン=レヴィットが共闘!『プロジェクト・パワー』はNetflixらしい充実の娯楽映画

飲むと5分間だけ超人的なパワーを手に入れることができる“謎の薬”。その存在がカギとなる物語だと聞くと、近年のスーパーヒーロー映画全盛の流れに乗じて、パワーをもって悪と対峙するヒーローの活躍を描くような作品ではないかとイメージしてしまう。ところが14日から全世界同時配信されたNetflix映画『プロジェクト・パワー』は、その予想を大胆に覆してくれる。“謎の薬”を撲滅させるために奔走する荒くれ者たちの闘いが、極めて過激な描写と共に描かれていくのだ。

オスカー俳優が悪の組織に立ち向かう!Netflix映画『プロジェクト・パワー』
オスカー俳優が悪の組織に立ち向かう!Netflix映画『プロジェクト・パワー』

謎の組織によって製造された薬が街中に広まったことで、そのパワーを使った凶悪犯罪が相次いで発生するようになったニューオーリンズ。元傭兵のアート(ジェイミー・フォックス)は、組織によって拉致された愛する娘を救出するために、売人のもとを訪ねながら組織の情報を得ようとしていた。そんななか、アートは売人の少女ロビン(ドミニク・フィッシュバック)と、地元の不良警官のフランク(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)と出会い、互いに協力しながら街を危機から救うために立ち上がることに。

娘を奪われた傭兵のアールは、組織の情報を得るために売人のもとを訪ね歩く
娘を奪われた傭兵のアールは、組織の情報を得るために売人のもとを訪ね歩く

物語の舞台となるニューオーリンズと言えば、アメリカ国内でも極めて犯罪発生率の高い危険な街として知られている場所だ。その街で、“謎の薬”を巡って繰り広げられる様々な犯罪。入手するために売人を襲撃する若者たちであったり、パワーによって透明人間になった男が銀行強盗をしたりと、さながら本作におけるSF的なこの要素は、現実社会にはびこる麻薬の存在を意図したものではないかと感じずにはいられない。そう考えると、これはSFアクションの形式を借りた、紛れもない社会派映画ではないだろうか。

【写真を見る】全身から炎、透明人間、鋼の体…多種多様なパワーが生まれる“謎の薬”とは?
【写真を見る】全身から炎、透明人間、鋼の体…多種多様なパワーが生まれる“謎の薬”とは?

映画序盤、アールが集合住宅に暮らす売人のもとを訪れるシーン。そこで謎の薬を摂取した売人は、たちまち全身から炎を放ちながら襲いかかってくる。一方で、ゴードン=レヴィット演じるフランクは強盗犯を追い詰めるために薬を飲み、全身が鋼のように堅くなるパワーを得て銃弾を弾き飛ばす。人によって得られるパワーがまるで異なるという、ある意味では個性を尊重した設定によって、次にどんなアクションが待ち受けているのか想像する余地が与えられる点は実に興味深いものだ。

そんななか売人の少女ロビンと出会い、協力し合うことに…
そんななか売人の少女ロビンと出会い、協力し合うことに…

もちろんキャスト陣も見逃せないポイントだ。『Ray/レイ』(03)でオスカー俳優の仲間入りを果たして以降も、コメディからアニメ声優まで幅広い役柄に挑み続けているジェイミー・フォックスが見せる、とにかく強じんで娘想いな父親像。また悪そうな雰囲気をかもし出しながらもどこか人情味あふれるゴードン=レヴィットの姿。そしてこの2人と対等に渡り合う、ロビン役のフィッシュバックも実に見事である。『ヘイト・ユー・ギヴ』(18)では主人公の友人役を演じ、そしてライアン・クーグラーがプロデュースを務める『Judas and the Black Messiah』にも出演する彼女。本作の好演ぶりからは、抜群の将来性を感じるはずだ。

メガホンをとるのは「ロックマン」のハリウッド実写版『Mega Man』の監督にも抜擢されたヘンリー・ジュースト&アリエル・シュルマン監督
メガホンをとるのは「ロックマン」のハリウッド実写版『Mega Man』の監督にも抜擢されたヘンリー・ジュースト&アリエル・シュルマン監督

息つく暇もなく展開する怒涛のアクションシーンの果てに訪れる、ハートウォームな結末はいかにもアメリカ映画らしい魅力を携えている。フォックスとゴードン=レヴィットのバディものとしてのニュアンスもありつつ、人種や立場も超えた友情を感じさせるドラマ性の高さもあり。SFアクションとして観てもヒューマンドラマとして観ても適切なバランス感を持った、充実した娯楽映画といえよう。
Netflix映画『プロジェクト・パワー』は現在独占配信中。

文/久保田 和馬

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