一世を風靡したあの女優のデビュー作!幻の名作スラッシャー映画を知っているか?
「ハロウィン」や「13日の金曜日」シリーズなどホラー映画のサブジャンルとして、70年代から80年代にかけて黄金時代を迎えたスラッシャー映画。その中でも“埋もれた”名作と名高い『アリス・スウィート・アリス』(公開中)をご存知だろうか?
少女は殺人鬼なのか…?長らくマスターが喪失していた埋もれた作品
建築家から映画監督に転向したという異色の経歴を持つアルフレッド・ソウル監督による本作。主人公は、学校や家庭で問題を起こしまくる12歳のアリス。彼女は母親が妹カレンばかりを溺愛するという家庭環境に置かれており、母や妹に対し屈折した感情を抱いていた。
とある聖餐式の日、教会で妹カレンが何者かによって惨殺されるという事件が発生。真っ先に疑惑の目がアリスに向けられるなか、その後も黄色いレインコートにプラスチックのマスクを被った謎の人物によって、次々と人々が殺されていってしまう…。
なぜ本作が“埋もれた”名作なのか?それは、製作された1976年当時は日本公開されておらず、その後、マスターが紛失するなどといった事情から、長期にわたり海賊版で観るしかないという状況が続いていたからだ。日本では最近、DVDが発売されることもあったが、2019年になり、倉庫に眠っていたオリジナルネガが発見され2Kでデジタル修復。ソフトの発売と共に、このたび日本劇場初公開へとこぎつけたのだ。
名監督からの影響を感じさせる恐ろしさと質の高さ
数々の作品から影響を受け、そして数々の作品に影響を与えた本作。ソウル監督のインスピレーションの元となったというのが、ニコラス・ローグ監督の『赤い影』(73)だ。同作には赤いレインコートを着た少女が登場するが、このイメージが本作のきっかけとなったようで、劇中にはオマージュを捧げる形で、黄色のレインコートの殺人鬼が登場するのだ。
またこれ以外にも、邪悪な子どもの恐ろしさを描いたマーヴィン・ルロイの『悪い種子』(56)やヒッチコックの作品など、名監督たちから影響を受けている。なにか恐ろしいことが起きる不穏感を煽る演出や音楽などサスペンス的な趣が強く、観ていていや〜な気持ちにさせてくれる。
また脚本の完成度も高く、物語が二転三転し、最後まで展開が読めないスリリングな緊張感が持続していく。そこにスタイリッシュな映像が合わさったジャッロ映画のような手触りも感じられ、一線を画したスラッシャーに仕上がっているのだ。
若き日のブルック・シールズのあどけない姿も!
質の高さはもちろんだが、本作がそのまま埋もれずに世に出た理由とも言えるのが、ブルック・シールズのデビュー作という点だろう。12歳の娼婦というセンセーショナルな役を演じ、一躍スターになった『プリティ・ベビー』(78)の1年前に作られた本作で、彼女は一番初めに殺されてしまう妹カレンを演じており、美しさとあどけなさを感じさせる姿を披露しているのだ。
長らく見ることができなかったというプレミア感、そして一世を風靡した女優のデビュー作という付加価値が加わり、隠れた名作として注目を集めている本作。劇場上映は1週間限定なので、急いで足を運ぶのが吉だ。なおソフトも発売されているので、そちらもチェックしてみてほしい!
文/トライワークス
発売中
価格:6,000円+税
発売元:是空
販売元:TCエンタテインメント
配給:合同会社是空