「クレヨンしんちゃん」の原点を再構築!傑作『ラクガキングダム』創作秘話を、京極尚彦監督&近藤慶一プロデューサーが明かす

インタビュー

「クレヨンしんちゃん」の原点を再構築!傑作『ラクガキングダム』創作秘話を、京極尚彦監督&近藤慶一プロデューサーが明かす

「きっと多くの方が『またぶりぶりざえもんを銀幕で見たい』と思っていたはず」(近藤)

ぶりぶりざえもんは、名作『映画クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』以来の本格参戦となった
ぶりぶりざえもんは、名作『映画クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』以来の本格参戦となったTELASA(テラサ)、ABEMA、Amazon Prime Videoにて一挙配信中[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 1998

人気キャラクターのぶりぶりざえもんが、劇場版としては21年ぶりにセリフ付きで登場することも話題だ。2000年に“初代ぶりぶりざえもん”の声優、塩沢兼人が逝去。2016年から神谷浩史が“2代目ぶりぶりざえもん”を引き継ぎ、本作は“神谷版”の銀幕デビュー作となる。「きっと多くの方が、『またぶりぶりざえもんを銀幕で見たい』と思っていたはず。僕もいつかその姿を見たいと思っていた」(近藤)、「原作の“ミラクル・マーカー”が登場する回にもぶりぶりざえもんが出ていたので、これは復活するいい機会になるのではという空気が生まれた」(京極監督)と、復活の道筋が見えた。

京極監督は「神谷さんは本当にいい声をされているので、“妙にいい声”を持っているぶりぶりざえもん役にやっぱり合いますよね。また神谷さん自身の奥底にある優しさがにじみ出ているような瞬間があるんです。その優しさが垣間見えるからこそ、愛されるキャラクターになっているのかなと思います」と神谷の演技を絶賛する。

「しんのすけを描くうえでは、ヒーロー化させすぎないことが大事」(京極)

しんのすけの持つ、“昭和のスター”のような魅力とは?
しんのすけの持つ、“昭和のスター”のような魅力とは?[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

「クレヨンしんちゃん」は、今年で連載開始から30周年を迎えた。2009年には原作者の臼井儀人が亡くなったが、近藤は「臼井先生が描いたしんのすけは、5歳児。子どもなんです。それを僕らが成長させてしまってはいけないと思っています」と臼井から受け継いでいきたい精神について明かす。
「本作の宣伝においても、“しんのすけが世界を救う”との文言がつづられていますが、実はしんのすけは世界を救おうとしているのではなくて、ただ、ななこおねいさんとご飯を食べたいだけなんですよね(笑)。しんのすけの想いはいつもシンプルなんです。臼井先生もしんのすけを成長させず、“5歳児のおもしろさ”という点に注力されて描かれていたと思うので、テレビシリーズでも劇場版でも、そこは曲げずに進んでいきたいなと思っています」。

京極監督も「まさにその通りなんですよね」と同調。「しんのすけは『世界の運命を背負って立つ!』なんてひと言も言ってないですから(笑)。仲間との別れについて思うところはあったと思うし、ちょっとした成長はしていると思いますが、すべてが終わればまたいつものしんのすけに戻るんです」と笑顔を見せる。
「しんのすけは、自由奔放で掴みどころがない。かといって人間味がないかというとそうではなくて、ひょいと優しさを見せたりする。カリスマ性があるけれど、描くうえではヒーロー化させすぎないことが大事かなと思っていました。例えばキレイなお姉さんの前ではシャイだったり、泣くところは見せなかったり、それって実は男子だったらみんな持っているものだとも思うんです。それが魅力的に描かれているのが、しんのすけ。ハードボイルドというか、昭和のスターのようでもありますね!」と語ると、近藤も「臼井先生がしんのすけの笑顔を真正面から描かなかったというのも、ハードボイルドですよね」、京極監督が「ちょっと次元大介のようですね。根底には昭和感があるのかも」と楽しそうに続けるなど、しんのすけの魅力となると話の尽きない2人。