黒沢清監督が17年ぶりの快挙！『スパイの妻』でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞

黒沢清が監督を務める『スパイの妻』(10月16日公開)が、第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。日本映画では、北野武監督による『座頭市』(03)以来17 年ぶりの快挙となった。

今年6月に放送されたドラマ版をベースに、スクリーンサイズや色調を調整した劇場版となる本作。赴いた先で国を揺るがす国家機密を知ってしまった貿易会社を営む優作(高橋一生)と、反逆者として疑われる夫を信じ、ともに生きることを誓う妻、聡子(蒼井優)が時代に翻弄されていく姿を描いたラブサスペンスだ。

世界三大映画祭の一つと言われるヴェネチア国際映画祭のメインとなるコンペティション部門に日本映画では唯一選出され、ワールドプレミアは早々に完売となっていた。新型コロナウイルスの影響により、監督、キャストは現地入りを果たすことができなかったが、上映後は拍手が響き、「近年の黒沢作品の最高傑作！」(Indiewire)、「純粋に楽しむことができ、国際的にも受け入れられるエンターテインメント」(Variety)、「黒沢監督はこの作品で、新たな野心的出発をとげる」(Screendaily)といったメディアからの賞賛の声が上がった。

なお、日本では溝口健二監督が『雨月物語』(53)、『山椒大夫』(54)で二度、黒澤明監督が『七人の侍』(54)、熊井啓監督が『千利休 本覺坊遺文』(89)、そして北野武監督に続く5人目の受賞となった。審査員の一人で『未来を乗り越えた男』(18)のクリスティアン・ペッツォルト監督は「大好きな作品です。オペラ的なリズムと画作りで政治ドラマを描く。このような作品には久しく出会っていませんでした。30～40年代の伝統的な世界を現代のスタイルで表現しています」と絶賛している。

受賞に際し、黒沢監督、蒼井、高橋からはコメントが到着。黒沢監督は「スタッフと俳優の力が最高のかたちで組み合わさった結果だと思っています。映画の可能性は無限なのだと、この歳になって実感しました」と喜びの言葉を語った。

劇場公開を来月に控えたタイミングでのうれしいニュースに期待もさらに上昇。名匠と実力派キャストが織りなすヒューマンドラマをぜひ劇場で見届けたい。