【今月の寅さん:10月編】松坂慶子がマドンナを演じる第27作、沢田研二&田中裕子の共演作も!「男はつらいよ」シリーズ5作品が放送!
山田洋次監督の代表作で、渥美清演じる車寅次郎こと“寅さん”が、毎回温かい笑いと感動を届けてくれる国民的映画『男はつらいよ』。現在、BSテレ東ではシリーズ計49作品の4Kデジタル修復版を毎週土曜日に放送する「土曜は寅さん!4Kでらっくす」を展開中で、10月には第27~31作が登場する。さて、今月の寅さんはどんな騒動を巻き起こすのか?
寅さんが大阪の芸者に惚れる『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』(81)<10月3日放送>
瀬戸内海の小島を訪れた寅次郎は、祖母の墓参りに来ていた浜田ふみ(松坂慶子)という美しい女性に出会う。彼女から両親が幼い頃に離婚し、祖母が育ての親だったことなどの身の上話を聞くが、その場は別れることに。しかし、ふみは大阪で芸者をしており、偶然、東大阪市の石切神社で水中花の啖呵売をしていた寅次郎と再会する。ふみに生き別れた弟がいることを知った寅次郎は、一緒に会いに行くことを提案するが、すでに弟は病死していた。
松竹の看板女優だった松坂慶子が悲しい境遇を背負ったマドンナを好演。山田洋次監督はこれまで大阪を舞台にすることはなかったが、本作では新世界や上述の石切剣箭神社(石切神社)、宝山寺などでロケが行われた。
テキヤ仲間の悲しい境遇が描かれる『男はつらいよ 寅次郎紙風船』(81)<10月10日放送>
大分県の夜明の旅館で、寅次郎は相部屋になった家出娘の愛子(岸本加世子)に気に入られ、一緒に旅をすることに。その道中、寅次郎はテキヤ仲間の常三郎(小沢昭一)の若い女房、光枝(音無美紀子)に声をかけられ、夫が重病であることを聞かされる。見舞いに向かった寅次郎は、常三郎から「万一俺が死んだら、あいつを女房にしてやってくれ」と言われてしまう。
シリーズのモチーフの一つでもある、テキヤ仲間の哀れな末路が本作では物語の中心に。寅さんと珍道中を繰り広げる愛子を岸本加世子が演じ、愛子の兄である漁師役で地井武男も出演している。
マドンナが寅さんにアタックする?『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』(82)<10月17日放送>
京都に来ていた寅次郎は、下駄の鼻緒を直してあげた縁で、人間国宝の陶芸家、加納作次郎(片岡仁左衛門)の家を訪れることに。そこで住み込みの女中として働いている、かがり(いしだあゆみ)という女性に出会い、寅次郎は夢中になってしまう。かがりには想いを寄せる男性がいたが、その男性が別の女性と結婚することになり、彼女は仕事を辞めて丹後の実家へ帰郷してしまう。
丹後まで追いかけてきた寅さんに惚れるマドンナのかがりを、歌手から女優になったいしだあゆみが演じる。寅さんの寝床にそっと忍びよるなど、これまでのシリーズでは見られなかった“男と女の関係”をほのめかすシーンも登場するが、当の寅さんは消極的な態度をとってしまう。また、人間国宝の作次郎役で歌舞伎俳優の片岡仁左衛門が出演しており、確かな存在感を放っている。
二枚目シャイボーイの恋を寅さんが指南!『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』(82)<10月24日放送>
大分県湯平温泉の宿で寅次郎は、ここで女中をしていたという母の遺骨を東京から運んできた三郎(沢田研二)に出会う。彼の母の法事をしてあげようと一肌脱いだ寅次郎は、同じ宿に泊まっていたデパートガールの螢子(田中裕子)とその友人にも参列してもらい、そのお礼として三郎が運転する車で観光を楽しむことに。別れ際、唐突に三郎が螢子に告白するも、まさかの出来事に「急にそんなことを言われても」と彼女は去ってしまう。二枚目だがシャイで奥手な彼を見かねた寅次郎は、またしても恋の指南役を買って出る。
記念すべきシリーズ第30作で、のちに夫婦となるトップスターの沢田研二と実力派女優の田中裕子が共演した。沢田演じる三郎に対して、螢子が「だって、二枚目なんだもん」と気後れし、一方の三郎も「男は顔ですか?」と寅さんに訊ねるなど、絶妙な笑いを誘ってくる。
寅さんと演歌歌手の珍道中『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』(83)<10月31日放送>
新潟県は出雲崎にやって来た寅次郎は、海の向こうに見える佐渡島に興味が沸き、漁船の船頭に島へ連れて行って欲しいと頼み込む。そこへ、近くで様子を見ていたワケありな女性に同乗させてほしいと声をかけられるが、彼女は演歌の女王、京はるみ(都はるみ)で、過密スケジュールと失恋の痛みから逃げてきたところだった。そうとは知らない寅次郎は、二人旅で楽しいひと時を過ごし、いつしかその正体にも気づくのだが、知らないふりを続けることにする。
都はるみの大ファンである渥美清の提案で、彼女の出演が実現。京はるみという役名は、彼女がデビュー時に名乗るはずだった芸名でもある。華やかな彼女の歌唱シーンも見どころの一つだ。
文/トライワークス