松本幸四郎と市川染五郎が語る、親子共演の三谷かぶきと、今後の展望
「希望や目標を持つことは、なにごとにおいても大事」(幸四郎)
三谷が新作歌舞伎を手掛けたのは、『決闘!高田馬場』(06)に続いて2本目となったが、幸四郎は両作で主演を務めている。三谷との作品作りについては「三谷さんの世界観は独特だと思いますが、事細かに指示されるような印象はないです。でも、気がつけば、いつのまにか三谷さんのお芝居のテンポになっているところが、すごく不思議です」と言う。「ただ、僕が知るかぎり、ここまで立ち位置や動くタイミングについて、細かく指示されている三谷さんを見たのは初めてだった気がします」。
染五郎は、初めて三谷の演出を受けてみて「どうしてこんな演出が出てくるのだろうとびっくりするんですが、実際にやってみると、どこかの場面とつながっていたり、物語としてつじつまが合ったりするので、すごいなと毎回思っていました」と感心しきりだった。
漂流中の神昌丸には、最初に17人の乗組員がいたが、船上だけではなく、アムチトカ島に上陸してからも、命を落としていく者たちがいる。彼らは、たとえ袂を分かつことがあっても、それぞれが遠く離れた故郷のことを忘れたことはない。幸四郎は、本作からどんなメッセージを感じ取ったのか。
「帰りたいと思っても、異国ですから、当時は帰る方法なんて一切わからないわけです。ただ、光太夫は、『絶対に帰る。帰れるんだ』と思い続け、それがすべての原動力になったから、希望や目標を持つことは、なにごとにおいても大事なんだなと、すごく思いました」
染五郎も「僕は、演じた磯吉の一生懸命さに惹かれました。なにかを信じ、自分のすべてを捧げて突き進むことで、光が見えてくるんだなと。特に本作は、実際にあった話なので、なおさらそのことを感じました。自分もそういう人でありたいなとも思います」と多くのものを受け取れたようだ。
Next
染五郎が、父親の幸四郎を「すごく変わっている人」と表現
作品情報へ