【今週の☆☆☆】衝撃のサスペンス『望み』、心にしみるヒューマンドラマ『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』など、週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、10月9日から今週末の公開作品をピックアップ。ベストセラー小説の映画化作、気鋭の製作会社A24とプランBが共に手掛けた話題作、あの暗殺事件の真実に迫る驚愕のドキュメンタリーなど、深い余韻を残す見ごたえ十分の3本!
自分だったら何を望むのか―“葛藤”を疑似体験…『望み』(公開中)
『犯人に告ぐ』や『検察側の罪人』でも知られる作家・雫井脩介の渾身のベストセラー小説を映画化したサスペンスドラマ。登場するのは、建築家の父、優しい母、高校生の息子、中学生の娘の4人家族。ある日、息子が失踪し、彼の友人の遺体が発見される。事件当時、被害者と一緒にいたとされ、いまだ行方不明中の少年は3人。そのうち2人は犯人で、残る1人はすでに殺されていると知った家族は――!?
3年の歳月を要して集められた理想のキャストというだけあり、4人家族を演じる堤真一、石田ゆり子、岡田健史、清原果耶はそれぞれ複雑な心理を見事に体現。はたして息子は犯人なのか、被害者なのか。どちらであっても報われない状況の中、ラストのギリギリまで、残された家族とともに「自分ならどちらを望むのか」と揺れ動きながら、息も苦しくなるほどの葛藤を疑似体験させられる。もし原作未読であるならば、映画鑑賞後に読むことを強くおすすめしたい。(映画ライター・石塚圭子)
故郷と、家族と暮らした家を愛する青年の想い…『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(公開中)
とある青年の故郷への思いをつづったヒューマンドラマ。かつては黒人街だったサンフランシスコの高級住宅地フィルモア。親友の家に居候するジミーの夢は、“この地にやってきた最初の黒人”である祖父が建てた美しい家でふたたび暮らすことだった。現在の家主が引っ越すと知ったジミーは、空き家になった懐かしの家に住もうとするが…。買い戻すのは無理だと知りつつ、家主の目を盗んでは“我が家”の手入れをするのが日課のジミー。ピュアで現実離れしたその言動はまるでおとぎ話の主人公だが、彼を通して明かされるのは格差や環境汚染など、この街を取り巻く厳しい現実。そんな暗部を含めて故郷を愛するジミーの姿はいじらしく、彼が外から故郷を目にするほろ苦い幕切れは希望に続くと信じたい。ノスタルジックな質感やレンズの圧縮効果で絵のように映る街並みなど、凝った映像にもご注目を。(映画ライター・神武団四郎)
まるで奇想天外なクライム・ミステリー!『わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない』(公開中)
2017年2月13日。北朝鮮の最高指導者である金正恩の異母兄、金正男がマレーシアで暗殺された。日本でも報道されたこの大事件は、猛毒の神経剤VXが使われたこと、衆人環視の国際空港ロビーで殺害が実行されたこと、そしてインドネシア人とベトナム人の若い女性2人が容疑者として逮捕されたことで大きな衝撃を呼んだ。本作は、この暗殺事件の知られざる背景に迫ったドキュメンタリー。とてもプロの殺し屋には見えない2人の女性は何者なのか、北朝鮮のスパイ部隊は彼女たちをどのようにして実行犯に仕立てたのか。緻密な取材と防犯カメラなどの映像を通して明らかになる真実の数々は驚きの連続で、奇想天外なクライム・ミステリーを観ているかのよう。さらに、スマホで撮影された動画やメッセージアプリのテキストが、重要な“証拠”として扱われている点も見逃せない。これは、まさにSNSの時代ならではの新たな形態の暗殺事件でもあるのだ。(映画ライター・高橋諭治)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス