【今月の寅さん:11月編】寅さんがお坊さんになり、人妻とも旅に出る!「男はつらいよ」シリーズ4作品が放送!
山田洋次監督の代表作で、渥美清演じる車寅次郎こと“寅さん”が、毎回温かい笑いと感動を届けてくれる国民的映画『男はつらいよ』。現在、BSテレ東ではシリーズ計49作品の4Kデジタル修復版を毎週土曜日に放送する「土曜は寅さん!4Kでらっくす」を展開中で、11月には第32~35作が登場する。さて、今月の寅さんはどんな騒動を巻き起こすのか?
寅さんがお寺に婿入り?『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』(83)<11月7日放送>
博の父、飃一郎の墓参りで岡山県の備中高梁にやって来た寅次郎。寺の住職(松村達雄)と意気投合し、そこの娘、朋子(竹下景子)の美しさに一目惚れしてしまう。さらに、二日酔いの住職の代理で法事を務めるなど、すっかり寺に住み着くことに。そんな時、父の三回忌で岡山にやって来た博(前田吟)たちは、法要の席で読経している寅次郎に遭遇し、驚がくする。
シリーズに出演してきた志村喬が本作公開の前年にあたる1982年に亡くなり、彼が演じた飃一郎も死去した設定になっている。朋子の弟役で中井貴一、彼の幼なじみ役で杉田かおるが登場し、ふたりの恋のエピソードも描かれる。劇中で和尚さんが「寅さんを婿養子にもらうか」と言ったのを聞き、僧籍に入る決意をする寅さんの奮闘ぶりは見ものだ。
渡世人として生きる人々の孤独が描かれる『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』(84)<11月14日放送>
北海道へ渡った寅次郎は、釧路で風子(中原理恵)というツッパリ娘に出会う。理容師の免許を持っているが、トラブルメーカーで長続きしない彼女に、かつての自分の姿を思い、一緒に旅に出ることにする。根室の叔母の世話で理容室に勤めることになり、落ち着いたかに見えた風子。しかし、旅回りのサーカス一座のオートバイ乗り、トニー(渡瀬恒彦)に惹かれ、再び旅暮らしに戻ってしまう。寅次郎が柴又へ戻ってきたある日、彼のもとに風子が病床にいるという報せが届く。
渡世人として生きる寅さんがいる世界が垣間見える作品に。渡世人稼業のわびしさを知る彼が、風子には幸せになってほしいと願うも、彼女はその意に反してトニーを追いかけてしまう。途中、寅さんと風子とともに旅をすることになる、蒸発した妻を捜す中年男を佐藤B作が演じている。
失踪した夫を訪ねて、寅さんが人妻と2人旅!?『男はつらいよ 寅次郎真実一路』(84)<11月21日放送>
上野の焼き鳥屋で飲んでいた寅次郎は、持ち合わせがないことに気づきピンチに陥るが、隣に居合わせた証券会社課長の富永(米倉斉加年)が代金を肩代わりすることで事なきを得る。翌日、お礼のために富永の勤め先を訪れ、またも2人で飲みに行くことに。痛飲した寅次郎は富永の自宅に泊めてもらうが、そこで彼の妻、ふじ子(大原麗子)に出会い、想いを寄せるようになってしまう。そんなある日、仕事に疲れた富永が通勤中に失踪。哀しむふじ子を連れて、彼の故郷の九州へ捜索の旅に出るのだった。
第22作『男はつらいよ 噂の寅次郎』(78)に続いて、大原麗子が2度目の出演。仕事で心身ともに疲れ果ててしまった富永を、シリーズでおなじみの米倉斉加年が好演する。恒例となっている冒頭の寅次郎の夢では、同じ松竹製作の宇宙大怪獣ギララが登場し、映画のシーンも挿入されている。
堅物な青年の恋を寅さんが後押しする『男はつらいよ 寅次郎恋愛塾』(85)<11月28日放送>
長崎県の五島列島にやって来た寅次郎は、クリスチャンの老婆(初井言榮)と出会い温かなもてなしを受けるが、翌未明に彼女は急死してしまう。その最期に立ち合い、墓掘りもした彼は、東京から葬儀に駆けつけて来た老婆の孫娘、若菜(樋口可南子)に声をかけられる。柴又へ戻ったあと、若菜からの礼状を受け取った寅次郎は、早速、彼女が暮らすアパートを訪ねる。そこには、司法試験の勉強をしている民夫(平田満)も住んでおり、彼はさほど口もきいたことのない若菜に密かに想いを寄せていた。堅物な彼を最初はからかう寅次郎だったが、2人の関係を取り持とうと、またしても恋の指南役を買って出るのだった。
ロケを行った五島列島の美しい自然が印象的で、キリスト教の葬儀の風景は、これまでにない荘厳な雰囲気を醸し出している。中盤で寅さんがマドンナに失恋するなど、シリーズのお約束が破られ、後半は若菜と民夫の恋のコーチ役に徹する2部構成的な作品になっている。
文/トライワークス