フランシス・フォード・コッポラ監督、『ゴッドファーザーPARTIII』30年を経て再編集の真意を語る「ずっと “喉につかえた骨”のようだった」
フランシス・フォード・コッポラ監督の代表作で、アカデミー賞作品賞、主演男優賞、脚色賞を受賞した『ゴッドファーザー』(72)、続編にも関わらず作品賞、監督賞ほか6部門を受賞した『ゴッドファーザーPARTII』(74)から、16年後の1990年に公開された『ゴッドファーザーPARTIII』の再編集版が、『ゴッドファーザー:マイケル・コルレオーネの最期』として30年ぶりによみがえった。このたび、コッポラ監督がカリフォルニア州ナパバレーの自宅からリモートインタビューに応じてくれた。貴重な証言の数々をお届けする。
『ゴッドファーザー:マイケル・コルレオーネの最期』パラマウント映画に眠っていたオリジナルフィルムから再度4Kスキャンし、大胆に構成や音楽を変えタイトルを変更し、いくつかの新しいシーンを追加したもの。コッポラ監督は、『PARTIII』はずっと “喉につかえた骨”のようだったと語っている。制作当初から、「ゴッドファーザー」映画の『PARTIII』ではなく、2作を総括する最終楽章のように捉えていたのだそうだ。再編集によって、悲劇的な離別を迎えるマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)と愛娘の関係を浮き立たせ、演技未経験ながらマイケルの娘メアリー役を演じ、強烈な批判を受けることになった当時17歳の実娘ソフィア・コッポラへの贖罪にもなっている。
――30年前に一度完成した映画を再編集、修復する作業はどんなものだったのでしょうか。
「いまとなっては笑い飛ばせる話だが、この映画が公開された1990年当時、私は『ゴッドファーザーPARTIII』と呼ぶのをためらっていたんだ。『PARTIII』というタイトルは、この映画の良い看板には思えなかった。『ゴッドファーザー』があり『PARTII』があり、3作目は2本の映画のエピローグのつもりで作っていた。音楽用語で言うところの、“CODA”(楽曲や楽章の最後部)であり、2本の映画で描いてきた事柄を説明し、映画の完結を祝福するような映画となるはずだった。(原作者のマリオ・)プーゾと私が考えていたタイトルは、『ゴッドファーザーCODA マイケル・コルレオーネの死』と言うものだった。だが、スタジオはこのタイトルに難色を示した。当時、クリスマス・シーズンに間に合うように映画の最終仕上げを急かされていたことも後悔の一つだった。そのことがずっと頭に残っていたので、ある日思い立ってスタジオに電話して、再編集したいと言ったんだ。ずっとその時を待っていたように、『いまだ』と感じて電話したんだよ。長い間喉になにかがつかえているようで、取り除かないといけないってね」
――再編集版のタイトル(注:英語版では『The Godfather, Coda: The Death of Michael Corleone』)になっていますね。
「これは『ゴッドファーザー』映画の続編ではなく、マイケル・コルレオーネの死と、彼が払う代償の物語になるはずだった。編集の面で言うと、今作は『ゴッドファーザー』で描いているように、バチカンがコルレオーネになにを求められていたのかを明確にはしていなかった。
この映画だけを観ると、コルレオーネ家と教会との繋がりがはっきりしていないので、冒頭のシーンでバチカン銀行との関係に行き詰まった司祭がコルレオーネ家に金銭を要求していることを示した。マイケルはバチカンにおける支配を強めるために合法的なビジネスを行おうとしている。それがマイケルとバチカンの取引だったのだが、1990年のバージョンでは、この取引内容を理解するのが困難だった。
そしてマイケルは教会のために慈善事業を行い、彼の妻のケイ(ダイアン・キートン)を叙勲祝賀会に呼んで欲しいと子どもたちに手紙を書いて伝える。このシーンを最初に持ってくることで、マイケルの欲望がどこに向かっているのかがはっきりする。彼は、犯罪に手を汚した一族の子どもたちのことを思い行動している。子どもたちには同じ轍を踏んでほしくないと願っている。この編集のほうがより物語を理解しやすくなるだろう。
以前のバージョンではたくさんのシーンが挟み込まれ、なにが起きているのかわかりづらかった。この編集によって、それぞれの行動においてマイケルの心情がとても明確になったと思う。彼の行動はすべて、子どもたちのためなんだ。タイトルの『マイケル・コルレオーネの最期』からマイケルの死を想像できるように、とても厳しいエンディングが待っている。だが彼の肉体は死んでいない。彼は娘の死に対する責任を受け入れ生きていかなくてはならない。それは彼にとって死を意味する。
『長生きしろ、長生きしろ』と言うけれど、マイケルにとって最悪なのは、マイケルは自分の悪行を噛み締めながら長生きしていることだ。後悔に苛まれながら死んでいくのは、ただ単に撃たれて死ぬよりもずっと感動的だと思ったんだ」
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