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フランシス・フォード・コッポラ監督、『ゴッドファーザーPARTIII』30年を経て再編集の真意を語る「ずっと “喉につかえた骨”のようだった」

インタビュー

フランシス・フォード・コッポラ監督、『ゴッドファーザーPARTIII』30年を経て再編集の真意を語る「ずっと “喉につかえた骨”のようだった」

【写真を見る】フランシス・フォード・コッポラ監督、批判を受けた娘ソフィア出演の『ゴッドファーザーPARTIII』を語る
【写真を見る】フランシス・フォード・コッポラ監督、批判を受けた娘ソフィア出演の『ゴッドファーザーPARTIII』を語る写真:SPLASH/アフロ

――今作では父親と娘の関係がより強調されているように感じました。直近にソフィア・コッポラ監督の『オン・ザ・ロック』を観たのですが、彼女はインタビューでビル・マーレイが演じた父親役に、あなたやあなたの世代の父親像を投影させていると認めていました。
「そうだね、その通りだよ。ソフィアは5歳の頃から常にユーモアがあって、自分のスタイルを持った早熟な少女だった。彼女が才能にあふれていることは、父親の私の目から見ても明らかだった。まさか映画監督になるとは思ってもいなかったがね。彼女が女優志望だとも思っていなかったが、どんなことにも楽しんで挑戦する娘だったので、映画に出て欲しいと言ったんだ。

当時のことを思い返すと、『ゴッドファーザー』は家族の物語だが、マイケル・コルレオーネのエゴによって殺されてしまった娘の物語は、娘のソフィアを映画に出演させて彼女の評価を地に落としてしまった自分の境遇と重なる。
『PARTIII』での彼女の演技を、批評家は『父親の映画を台無しにした』とこき下ろした。映画界で力のある父親に『映画に出演しなさい』と言われた17歳の娘が拒否できるはずなんてないのに、そこまで攻撃する必要があったのだろうか?それらの批評は彼女に宛てたものではなく、私に向けられたものだと受け取った。だから、だからこれは私とソフィアの物語でもあったんだよ」

ソフィアは監督作『オン・ザ・ロック』のビル・マーレイに父コッポラ監督を投影したと語っている
ソフィアは監督作『オン・ザ・ロック』のビル・マーレイに父コッポラ監督を投影したと語っている写真:SPLASH/アフロ

――コルレオーネ家とコッポラ家はビジネスの内容は違いますが、強い家族の絆を持ちファミリー・ビジネスを行なっているところが似ています。コッポラ家の絆についてはどうお考えですか?
「コッポラ家の家族の絆?私は常に子どもたちを第一に考えて行動してきた。映画の撮影でどこかへ行くときは、常に子どもたちを連れて行ったものだ。日本に行った時も、子どもたちを連れて行ったよ。どこへいく時も家族を帯同したのは、家族とは共に成長していく共同体だと考えていたからだ。一番小さな子どもを肩車して、まるで中国雑技団の家族が一緒に旅するようにね。コッポラ家はいまだにそんな感じだ。いまはソフィアがコッポラ家の最大のスターで、私はただの老いぼれだけどね(笑)」

――「ゴッドファーザー」3部作を初めて観る若い映画ファンに、この映画を説明するとどういうものになりますか?
「これは家族によって作られた、家族の物語だ。ここで描かれているのは、実際に家族が感じた、生の感情だ」

当時17歳のソフィア・コッポラが、マイケル・コルレオーネの愛娘役として出演
当時17歳のソフィア・コッポラが、マイケル・コルレオーネの愛娘役として出演TM & Copyright [c] 1990 by Paramount Pictures. All Rights Reserved. FROM ZOETROPE STUDIOS TM, [R] & Copyright [c] 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

――あなたの2020年はどんな年でしたか?
「2020年は読書の年だった。とにかくたくさん本を読んで、良い映画もたくさん観た。特に1930年代に作られた映画をよく観ていたよ。最初のトーキー映画で、新しい気付きがたくさんあった。そして溝口健二や小津安二郎の映画もよく観た。特に気に入っているのは溝口の『祇園の姉妹』、小津映画では『東京物語』だね」

――ここ数年起きているパラダイム・シフトによって、映画業界は変わりつつあります。お住いのカリフォルニア州では、パンデミックによって映画館が閉鎖されたまま2020年を終えようとしています。この状況をどのように捉えられていますか?

パンデミック後の映画業界に希望を抱くコッポラ監督
パンデミック後の映画業界に希望を抱くコッポラ監督写真:SPLASH/アフロ

「映画業界は、このパンデミックを乗り越えたらさらに発展すると信じている。日本ではどうかわからないが、アメリカに関していえば、映画館で上映される作品を“映画”と呼ぶと思っている。
ただ、危惧しているのはここ最近の映画館は全く美しくなく、まるでファーストフード店のようになってしまったこと。映画の上映の前にたくさんのCMが流れ、観客は食べ物をつまみながら映画を観る。映画館の大きなスクリーンで映画を観る行為は、もっと美しく特別で、忘れがたい体験だったはずだ。私はいまだに、友達のジョージ・ルーカスと一緒に美しい映画館で『アラビアのロレンス』を観た映画体験を忘れられずにいる。おそらく、一生忘れることはできないと思う。2021年には、美しい映画館で人生を変えるような映画体験をまたできることを願っているよ。そう願っているし、そうなると信じているんだ」

『ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期』は本日8日よりデジタル配信中、Blu-rayは12月23日(水)に発売される。

取材・文/平井 伊都子

■『ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期』
デジタル配信中
Blu-ray 12月23日(水)発売
価格:Blu-ray 1,886円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

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