岩井俊二監督と[Alexandros]が語る、初コラボ『夢で会えても』の舞台裏「映像化することで、人に光を与えられるものになった」
ロックバンド[Alexandros]と、『ラストレター』(20)の岩井俊二監督が初タッグを組んだショートムービー『夢で会えても』が、12月5日よりLINE NEWSの動画コンテンツ「VISION」で公開中だ。ヴォーカル&ギターおよび作詞作曲も担当する川上洋平たっての希望から実現したという本作。[Alexandros]のメンバー4人と、岩井監督を直撃し、コラボレーションした感想を聞いた。
『夢で会えても』は、2021年1月20日(水)にリリースされる[Alexandros]初のベストアルバム『Where’s My History?』に収録される楽曲「rooftop」にインスパイアされた岩井監督が、オリジナル脚本を書き下ろした、ミステリアスさをはらんだファンタジー映画。劇中で4人が演じるのはずばりバンドマン役で、ヨウ役を川上洋平が、ダイ役を磯部寛之が、シン役を白井眞輝が、ショー役を庄村聡泰が、そして謎の女役を女優の穂志もえかが演じた。
――まずは、今回のコラボレーションが実現した感想から聞かせてください。
川上「すごく光栄でした。岩井さんは、以前から仲良くしていただいてるメル友なんです。自分がなんの気なしに、ふっと書いたシンプルな歌がここまで具現化し、深みを帯びた映画になること自体が、非常に驚きでした」
――岩井監督は、川上さんと話し合いながら、脚本化されていったのでしょうか?
岩井「いや、緊急事態宣言中だったので、特に話し合って作った感じではないです。この歌を聴いた時、空の向こう側にいる仲間たちに想いを馳せるような内容を、なんとなく発想したので、それをファンタジーに落とし込んだ感じです。背中から木が生えたらおもしろいかなとか」
川上「あの発想が、どこから出たのか気になります」
岩井「夢という題材は、いつかはトライしたいなとは思っていたんです。また、この前に作った『8日で死んだ怪獣の12日の物語』もそうですが、今年はコロナがあって、なかなかリアルな話が作りにくい年だったので」
――それはなぜでしょうか?
岩井「これまで僕たちがいる世界は、基本的には現実はハッピーだという状況が担保されていたと思うけど、実はそうではなくて、戦争している国も世界中にあったわけです。そういういう当たり前のことを、たぶんいま日本中が、いや世界中が学んでいるのかなと。いまリアルな物語を作って、そこから戻ってきても、まだコロナ禍という辛い現実が待っている。みんなが体験していると思うけど、映画を作る時、劇中でマスクはするの?しないの?という問題もあるし、かといってコロナの状況を無視して物語を描いても嘘になるかなと思ったので、今年に作るのならファンタジーがいいと思いました。ただ、今作はコロナを無視した世界ではなくて、かなりコロナ寄りの物語になっていて、マスクも手洗いも出てきます」
川上「僕は逆で、もともと『rooftop』が日記のように、エッセイ的なものを歌詞に落とし込んだものだったので、そこに岩井さんがファンタジーという要素を入れて脚本を書いてもらった時、その内容がすごく立体的に広がったなと思いました。曲は無機質なもので形がないけど、それを映像化することで、人に光を与えられるものになった気がするので、岩井さんには本当に感謝しています」
――捉え方がそれぞれに違う点も興味深いですね。
白井「僕自身は、登場するのがバンドマンの4人で、コロナ禍という状況が描かれているので、この物語をノンフィクションっぽく捉えました。もちろん、身体から木が生えるという設定は、フィクションだし、ファンタジーなんですが、自分たちがコロナ禍で感じた気持ちや、詞曲を作っている洋平や僕たちの雰囲気は、けっこうリアルに近い感じがしました。やっぱり岩井さんもクリエイターなので、クリエイター同士のシンパシーがある気がしたんです。僕も、自分が自分を演じるような感覚を覚えました」
庄村「自分としてすごくおもしろかったのは『紙ストローの感覚に慣れない』というナレーションです。僕自身も今後、手洗い、マスクのほか、紙ストロー問題がどういうふうになっていくんだろうなと思っていたので、岩井さんがそこにフォーカスを当ててくれたことが、とても意義深いなと思って見てました」
『夢で会えても』episode1「HOME」
https://lin.ee/gflJMPE
『夢で会えても』episode2「女」
https://lin.ee/Tudin4X