金子修介監督、平成ガメラ三部作を語る!令和ガメラにも「やる気十分」

インタビュー

金子修介監督、平成ガメラ三部作を語る!令和ガメラにも「やる気十分」

2020年は『ガメラ』生誕55周年のメモリアル・イヤー。4Kで修復された平成版第1作『ガメラ 大怪獣空中決戦』のドルビーシネマでの劇場公開があり、2021年1月29日には同作のUltra HD Blu-ray発売、さらに2月11日には『ガメラ2 レギオン襲来』4K HDR版もドルビーシネマで上映されることが決定し、多くの『ガメラ』ファンや怪獣特撮映画ファンが喜びの声を上げている。そこで平成三部作を監督した金子修介監督に当時の制作の裏側や令和版『ガメラ』の可能性など、シリーズの過去、現在、未来を存分に語ってもらった。これまで表に出ることのなかった真実も明らかになる!

【写真を見る】「同じ名前だから」と大映がダイエーに提携を持ち掛け、福岡ドームで撮影することに
【写真を見る】「同じ名前だから」と大映がダイエーに提携を持ち掛け、福岡ドームで撮影することに『ガメラ 大怪獣空中決戦』[c]KADOKAWA 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ/1995

「生物的にありえない“回転ジェット”が納得できなかった」

まずは4Kで修復された第1作『ガメラ 大怪獣空中決戦』(以下『G1』)を観た率直な感想をきいてみた。

「今回の4K版は以前に出ていたものと比べると色が濃くなった気がします。そのぶん(中山)忍ちゃんの化粧が見えすぎちゃったかな(笑)。音はかなりよくなったと思います。ドルビー・アトモスの導入も、録音の橋本(泰夫)さんが当時の僕の意図をよく覚えていてくれて、うまく再現してくれましたね。映像に関しては劇的に良くなった感じはありませんでした。というのも『G1』は25年前の作品だけど当時の現像の状態も良くて、元々の映像のクオリティがかなり高かったんですよ。だから僕にはそう見えてしまうのかもしれません。ただ、僕の記憶にある『G1』に最も近いものになっていると思います。

実は今回4Kになるにあたって密かに期待していたことがあったんですよ。米森(伊原剛志)がヘリで福岡ドームにやってくるシーンで、海をバックにして撮れば(海の側にある)福岡ドームにやってきたのがわかると思って、海側にカメラを向けて準備していたんです。撮影したのは木更津だったんだけど、遊覧飛行のヘリがいなくなるのを待って撮る段取りだったのに、いつまで経ってもいなくならない。そのうち陽が暮れてしまい、せっかくの海が見えなくなって悔しい思いをしたんです。4Kだと見えるかもと期待したのですが、やはり真っ暗は真っ暗のままでしたね(笑)。

反面、画質が良くなると見えてほしくないところまで見えるようになることがあって、例えば米森が環礁から海に落ちるシーンはプールで撮っていて、完成した映像を観てプールの境界線がわかってしまうのが嫌だったんだけど、それがより際立ってしまった。そう考えると画質が良くなりすぎるのも良し悪しかな(笑)」

95年に公開され、マニアックな怪獣ファンや特撮ファンを唸らせた平成『ガメラ』だが、どのような経緯で復活したのだろうか。

「84年か85年だったか、僕がまだロマンポルノを撮り始めたばかりの頃に、後にアルタミラ・ピクチャーズを設立する大映の桝井(省志)さんから『大映で「大魔神」の企画がある』と聞いて、『「大魔神」は時代劇でセットや衣装だけでも予算がかかるから、やるなら「ガメラ」のほうがいいのでは?』と冗談っぽく言ったのを覚えてます。そのときは具体化せず、話は聞かなくなりました。僕は元々、怪獣映画も好きで以前から東宝にゴジラをやりたいと訴えていたんですが、いい返事はもらえずにいたんです。92~93年頃に大映の企画部から『ゴジラの仇をガメラで取りませんか』と誘われたんです(笑)。打ち合わせに行くと、すでに小中千昭、和哉さんと岡田恵和さんの書いた2種類の脚本が用意されていましたので、大映の中で企画は進んでいたんだと思います。その日が平成『ガメラ』が本格的に始動した日だと思います」

「回転ジェットは生物的にありえないので納得できなかった」と金子監督
「回転ジェットは生物的にありえないので納得できなかった」と金子監督『ガメラ 大怪獣空中決戦』[c]KADOKAWA 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ/1995

平成『ガメラ』は、子供好きの正義の怪獣だった昭和『ガメラ』から、人類あるいは地球の守護神へとリブートされた。新たなガメラはどのように作られていったのか、そこには戦いの日々があった。

「結果的にはリブートしたことになるんですが、実はキャラクターを変えていいとは言われていなかったんです。でも僕にはガメラがジェット噴射で回転しながら飛んでいく、いわゆる“回転ジェット”が生物的にありえないので納得できなかったんです。公開当時でも子供たちが『あれじゃ目が回っちゃうよ』なんて言ってましたから。でも困ったことに多くの人が持つガメラのイメージは回転ジェットなんですよ(笑)。SF映画としてどこまで昭和の設定を残すか、けっこう長い間悩みましたね。

結果的に回転ジェットはやるしかないのか…となったんですが、『これならいける』と思う出来事があったんです。福岡ドームからガメラが飛び立つ瞬間はCGなんですが、手足を引っ込めて浮いたガメラがジェット噴射した瞬間、一度グッと下がってから回転して飛んでいくんです。そのちょっとしたマニア心をくすぐる演出が良かったし、リアリティを感じることができた。この見せ方なら大丈夫、いけると思った瞬間でしたね。でも本当は他にやりたかったことがあったんですよ。

ガメラやギャオスをデザインした前田(真宏)さんのコンセプト・アートでガメラの手が『ガメラ2 レギオン襲来』(以下『G2』)のときのようなヒレ状になっている絵があって、足だけ引っ込めた飛行シーンでは手をヒレ状にしたかったんです。昭和『ガメラ』の両腕をくの字にした体勢…僕らはファイティングポーズと呼んでいたんですが(笑)、それだと平衡を保てないからヒレ状にするのが自然だと思ったんです。ところが、聞いた話ではその絵を見た大映の製作陣は『これは絶対にダメだ』と騒然となったそうです。このときは僕らが妥協することになりました。結果的に『G1』が高い評価を得たおかげか、『G2』ではヒレ状の手も『やっていい』となりましたが、もし『G1』の吊り橋のシーンでガメラの手がヒレ状になって飛んでいったら、ファンの間の論争を起こせたと思うんですけどね、そこは残念です」

平成ガメラ 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray 【HDR版】
(4K Ultra HD Blu-ray+Blu-ray 2枚組)

『ガメラ 大怪獣空中決戦』1月29日(金)発売
『ガメラ2 レギオン襲来』『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』3月26日(金)発売
各7800円(税抜)
発売・販売:株式会社KADOKAWA
公式HP http://cinemakadokawa.jp/gamera