『ズーム/見えない参加者』俊英監督が、『樹海村』清水崇監督と語り合った、ホラーへの熱い想い
「どんなホラー映画でも作れる監督になりたい」(サヴェッジ)
清水「ロブは今後どんな作品を作っていこうと考えていますか?ホラー専門の監督になるのか、それともほかのジャンルにも挑戦していこうと思っているのか」
サヴェッジ「まずはどんなホラー映画でも作れるような監督になりたいと思っています。ホラーという前提があれば、登場人物のバックグラウンドや様々なシチュエーションをよりダークに掘り下げていくことができる。それになによりもホラー映画が大好きなんです。以前『Dawn of the Deaf』という、ろうあ者を主人公にした手話だけで進むホラー短編を作ったのですが、今度それを長編にする話もあるんです。たぶんホラー作品だからこそ、このようなテーマの作品でも出資してもらえたのではないかと感じています」
清水「たしかにホラーはマイノリティの方を描くためには打ってつけのジャンルかもしれません。世代による感じ方のギャップもそうですし、ほかのジャンルの映画ではできないような掘り下げができる要素がいくつもある」
サヴェッジ「それに観客もホラー映画だと思ってもらえれば、物語が映像でつづられていくんだと最初から分かってもらえるはず。僕はヒッチコックのように映像で物語を作っていくことが好きで、監督していてもいつもワクワクするんです」
清水「ホラー映画にはそういうおもしろさがあるから、僕もろくに英語ができないのにアメリカで作るチャンスが得られたのだと思っています」
サヴェッジ「『THE JUON/呪怨』ですね!ハリウッドと日本では映画づくりの環境はだいぶ違うと思いますが、ご自身の映画をハリウッドリメイクするというのはどういう体験でした?」
清水「最初にオファーをもらった時には、セルフ・リメイクなんて意味のないことだと思って断ったんです。でもプロデューサーに説得され、アメリカに渡ってハリウッド側のプロデューサーを務めたサム・ライミに会ったら、すごく情熱的な人で。
僕のそれまで撮った映画を、あなたと違って(笑)、全部きちんと観てくれていて、一つ一つ『これはどうやって撮ったんだ!?』って訊いてくるんです。その熱意を見たら、やってみようかなという気持ちにさせられました」
サヴェッジ「実は僕もいまサムと仕事をしているんです。すごくエネルギーがある人で、どの発言にも説得力がある。清水監督が納得させられたのもよくわかります。去年ロサンゼルスに行ってサムと会った時は、人生で一番緊張しました(笑)。いま僕らは民間伝承をもとにした長編映画の企画開発を進めているところです」
清水「余談ですけど、僕が仕事を終えて日本に帰る直前に、サムが『死霊のはらわた』で使った手巻き式のカメラをくれたんですよ。いまでも家に飾ってあります。ロブもお願いしたらなにかもらえるかもよ(笑)」
サヴェッジ「…本当ですか!次会いに行けた時にねだってみます(笑)」
取材・文/久保田 和馬