『ノマドランド』でアカデミー賞3冠をねらうクロエ・ジャオ監督、最新作は近未来SFの『ドラキュラ』
バンに乗り荒野をさまよう、現代の遊牧民(ノマド)を描いた『ノマドランド』の評判が高く、ゴールデン・グローブ賞では映画部門(ドラマ)作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされているクロエ・ジャオ。4月25日に行われるアカデミー賞を予想するサイトでも、作品賞、監督賞、脚色賞の3冠が最有力視されるフロントランナーとなっている。受賞となれば、女性監督としては『ハート・ロッカー』(08)のキャスリン・ビグロー以来、アジア人としては昨年の『パラサイト 半地下の家族』(19)のポン・ジュノ監督に引き続き、そしてアジア人女性監督として初の快挙となる。
ジャオ監督の次回作はマーベル・シネマティック・ユニバースの『エターナルズ』(11月5日北米公開予定)が既に発表されているが、さらなる新プロジェクトの情報が追加された。ユニバーサル映画のプレス・リリースをもとに「Hollywood Reporter」などが報じたところによると、次回作は「ドラキュラ」となるそうだ。ジャオ監督は自身の製作会社Highwaymanを通じて監督、脚本を務め、世界で最も有名な吸血鬼、ドラキュラを題材にした近未来的なSF作品になるという。
“社会のはみ出し者”ドラキュラの物語は、ジャオ監督がいままで描いてきた作品のテーマとも通じる。ユニバーサル映画のピーター・クレイマー社長は、「クロエ・ジャオ監督の独特な視点は、社会から見落とされ、誤解されがちな人々に光をあてます。史上最も象徴的なアウトサイダー的キャラクターであるドラキュラを彼女とともに作り上げることに興奮しています」と述べる。ジャオ監督は、「私は常にドラキュラと、彼らが体現する他者の概念に魅了されてきました。ドラキュラのような愛されるキャラクターをユニバーサル映画とともに再構築できることに喜びを感じています」とコメントしている。
2021年は、ベラ・ルゴシ主演、トッド・ブラウニング監督によるホラー映画の金字塔『魔人ドラキュラ』(31)が公開されて90周年を迎える年。ユニバーサル映画は、同社が持つ映画ライブラリーを現代に蘇らせるプロジェクトとして、エリザベス・モス主演、リー・ワネル監督の『透明人間』(19)などを製作している。『ノマドランド』の成功で、ハリウッド中が羨望の眼差しで見つめるクロエ・ジャオ監督の最新作に期待は募るばかりだ。
文/平井 伊都子