役所広司が教習所で奮闘!?『すばらしき世界』やる気が空回りする本編映像公開
直木賞作家である佐木隆三の小説「身分帳」を原案に、『永い言い訳』(16)の西川美和監督が初めて実在の人物をモデルに紡いだ『すばらしき世界』(2月11日公開)。役所広司が人生の大半を刑務所で暮らした元殺人犯を演じた同作より、本編映像が解禁された。
生きづらい社会のなかで、一度レールを外れても懸命にやり直そうとする実在の男と、彼を追う若きテレビマンのカメラを通して「社会」と「人間」の“今”をえぐる本作。現代社会に鋭く切り込みつつも、西川監督の生み出す軽やかで人間味に溢れたユーモアが所々で顔を覗かせるのも見どころのひとつとなっている。
解禁された本編映像では、「今度こそカタギになる」と強く心に誓った三上(役所)が、服役中に失効した運転免許を取り直すため、決死の覚悟で挑んだ技能試験の様子が映しだされる。「受験番号8番、三上正夫!」の掛け声で意気揚々と車に乗り込むも、シートベルトのし忘れやワイパーの誤作動などの凡ミスを連発して次第に焦り始める三上と、微妙な表情を浮かべる同乗者との対比に思わず頬が緩む。
また、三上は教習車まで腕を大きく振って“行進”していくが、この刑務所仕込みの動作はカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『うなぎ』(97)に役所が出演した際に、今村昌平監督から受けた演出だという。本作の撮影時にはすでに刑務所内でも見かけることのない所作だったが、役所は「三上は“ベテラン”の受刑者だから」と後に語っている。
この他にも、壮絶な前科を持つ三上を演じるにあたり、役所は様々な技術を身に着けスクリーンで披露している。不器用で荒々しくもどこか愛らしい三上を演じきった役所の怪演を、心に染みる人間ドラマとともに堪能してほしい。
文/足立美由紀
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