『ヤクザと家族』綾野剛のすごみとは?スタントなしアクション、スリムマッチョな身体作りの秘話を藤井監督が語る
『新聞記者』(19)の藤井道人監督の最新作『ヤクザと家族 The Family』(公開中)の大ヒット公開記念オンライントークイベントが2月11日に開催され、藤井監督と佐藤順子プロデューサーが出席。藤井監督が、主演の綾野剛の身体能力や、“役として生きる”すごみについて語った。
本作は、変わりゆく3つの時代に、ヤクザとして生きるしかなかった男と、彼を取り巻く人々を“家族”という視点から描いた人間ドラマ。この日の聞き手は、 笠井信輔(フリーアナウンサー)、松崎健夫(映画評論家)が務めた。
1999年、2005年、2019年と3つの時代を3章立ての構成で描く本作で、綾野は、主人公、賢治の19歳から39歳の姿を演じわけた。「クランクインの2か月前までは、3章(立て)になる予定ではなかった」と明かした藤井監督。「3章(の内容)だけを描く映画にはしたくなかった。なぜその人たちがこうなったのかを、自分も知る必要があった。登場人物たちの、生きてきたうえでの罪みたいなものをちゃんと描けたらいいなと思った」と話す。
綾野のアクションも話題となっているが、賢治が車に轢かれるシーンでは「台本には“車に轢かれる”とは書いていなかった」のだとか。「(ロケ地の)沼津入りして、アクション監督と『なんか足りないな』と言っていた時に、“車にはねられる”というアイデアが出て。スタントマンも用意していたんですが、剛さんが『それ、俺やるよ』と言ってくれた」と迫力の場面も綾野本人が演じているという。さらに、「カメラアシスタントが剛さんの走りについていけず、転んだ。剛さんが、その手当をしてくれた」と裏話を明かしていた。
賢治のビジュアルについては、藤井監督は「毎日会ったり、電話をしたりして、どういうところに傷があるのかなど、剛さんとビジュアルを決めていった」と述懐。「剛さんは『前日に金髪に染めても、それは“染まった状態”というただの形。金髪の顔にちゃんとなりたい』というお話をされていて、撮影の2週間前にはもう染めていた」そう。
配信の視聴者から「銭湯での綾野さんの身体、スリムマッチョがすごすぎた。CG?」という質問も上がったが、藤井監督は「CGじゃないです」とにっこり。「百戦錬磨な人間の身体をどう作るかを考えて、仕上げてくれた」「この役は『こういうものを食べているから、こういう体型をしている』など、身体に対しての意識がすごい。3章ではすごく猫背になっているなど、身体、そして心から役になっている。すごく感謝しています」と綾野の熱量の高さに感激しきりだった。
賢治と親子の契りを結んだヤクザを演じている舘ひろしについては、佐藤プロデューサーが「初めて舘さんのシーンを撮った時、オーラがすごかった」とコメント。「『現場ではバスローブでいらっしゃる、コンテナでいらっしゃる』など、いろいろな噂を聞いていた」とドキドキしていたそうだが、「実際に現場に入ってみると、すごくフランクに接してくださった。『こんなことがあったんだよ』など昔のスタジオの話もたくさん教えてくださった。スタッフもすごく楽しかったと思う」と感謝していた。
取材・文/成田おり枝