「X-MEN」コレクション最新作は“青春ホラー”!杉山すぴ豊が語る『ニュー・ミュータント』の見どころ
昨年8月に全米公開され、興収ランキングで初登場1位に輝くヒットを記録したマーベル・コミック原作のSFアクション『ニュー・ミュータント』(先行デジタル配信中、3月31日ブルーレイ+DVDセット発売)が、ついに日本上陸。運命に抗いながら闘う5人の若者たち、“ニュー・ミュータント”の姿をドラマティックに描く本作の見どころを、“アメキャラ系ライター”としてアメコミファンにはおなじみの杉山すぴ豊に紹介してもらった。
「X-MEN」シリーズや「デッドプール」シリーズなど、スピンオフ作品も含め全世界歴代興収56億ドルを突破する「X-MEN」コレクションに連なる本作。未熟さゆえに特殊能力の制御ができずに辛い過去を背負ってきたダニとイリアナ、ロベルト、サム、レインの5人。とある極秘施設で訓練を受ける彼らの前に、突如謎のモンスターが出現。恐怖で錯乱状態に陥るなか、彼らにさらなる危機が訪れることに。
昨年世界中で記録的な視聴数を叩きだしたNetflixオリジナルシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」で主演を務め、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)のスピンオフで若き日のフュリオサ役を演じることが決まったアニャ・テイラー=ジョイ、「ゲーム・オブ・スローンズ」のメイジー・ウィリアムズや「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のチャーリー・ヒートン、「13の理由」のヘンリー・ザガと、注目の若手スターが一堂に集結するなかで主人公のダニ役を演じたのは、これが長編映画初出演となる新星ブルー・ハント。先日解禁されたハントの特別インタビュー映像には、メイキング映像と共に撮影を振り返る、彼女の素に近い表情も収められている。
そんな本作について杉山は、「例えばマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が、MCUという大きな世界観のなかで『アベンジャーズ』シリーズのような壮大な話を語る一方で、青春路線の『スパイダーマン』シリーズを展開するように、本作は『X-MEN』の世界観を使って青春ものを作るという野心作。ミュータントではあるけれどX-MENではない男女5人の若者にスポットをあてた群像劇です」と語り、「ミュータントとしての覚醒と思春期のめざめを絡めて描いていますが、もう一つ、いままでの作品にはない要素があります」と、これまで数多く作られてきたマーベル・コミック原作作品との大きな違いを挙げる。
「それはホラー。彼らのパワーがオカルティックな敵を引き寄せてしまうのです。『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の彼らがもしミュータントだったら?みたいな映画と言えばわかるでしょうか。『X-MEN』らしさも担保しつつヤングアダルトノベル的な青春ホラーの魅力を持ったエンタテインメントです」。
さらに杉山は、「本作の主人公は新星ブルー・ハントが演じるダニです。自らのパワーに戸惑う少女がほかのミュータントと出会うことで事件が起こるという展開は1作目の『X-MEN』を思い出しました。あの時はキーになる少女ローグをアンナ・パキンが熱演していましたが、ブルー・ハートのダニもまたファンの心に残るミュータント少女となりました。そしてこの映画で言及される“ある会社”は映画『X-MEN:アポカリプス』およびヒュー・ジャックマン最後のウルヴァリン映画『LOGAN/ローガン』のなかにも登場します」と、本作と歴代の「X-MEN」映画との関係性を明かす。
本作は1982年に刊行されたマーベル・コミック「New Mutants」が原作となっている。「実はデッドプールも元々このコミックからデビューしました。そして映画『デッドプール』『デッドプール2』には全身が金属肌のコロッサスというミュータントが登場しますが、このコロッサスとアニャ・テイラー=ジョイ演じるイリアナはコミックでは兄妹という設定です。だからイリアナが発揮するスーパーパワーは兄の能力とちょっと似たところがあります」と、原作コミックファンにはうれしいトリビアも披露した。
「コミックにはTHE RIGHTという、なぜかスマイル顔の武装軍団が登場しますが、この映画のなかでも“スマイル顔”が出てくるのは、そのオマージュかもしれません」と、あらためてアメコミへの造詣の深さをのぞかせると、「もちろんコミックやいままでの『X-MEN』映画を知らなくても『ニュー・ミュータント』は楽しめますが、『X-MEN』シリーズ好きの方ならこうしたことを頭に入れておいてぜひ観てください」と、アメコミファンやシリーズファンに向けて呼びかけた。
このようなトリビアもあるが、本作でメガホンをとるブーン監督は数年前にアメリカの若者の間で社会現象を巻き起こした『きっと、星のせいじゃない。』(14)を手掛けた青春映画の名手。本作を手掛けるにあたって、杉山の紹介にもあった「IT/イット」の原作者でもあるスティーヴン・キングの作品や、不朽の名作『カッコーの巣の上で』(75)を参考にしたということも語っており、アメコミファンだけでなく青春映画ファンからホラーファンまで幅広い層に刺さる映画になっている。シリーズものという先入観を忘れ、一本の青春映画やホラー映画として、本作を楽しんでみるのもアリかもしれない。
構成・文/久保田和馬