メルギブの“最終兵器”ぶりが熱い!『リーサル・ストーム』で身体を張ったアクションを披露
巨大ハリケーンの猛威にさらされ、マンションという隔絶された空間で、警官と強盗団の激しい攻防が展開される『リーサル・ストーム』(公開中)。本作の見どころはなんといっても、ハリウッドきっての大スター、メル・ギブソンが出演していること。しかも、体を張ったアクションで熱演を披露している!
物語の舞台は、プエルトリコの首都サンフアン。ある日、この街に“カテゴリー5”の巨大ハリケーンが迫り、地元の警官コルディーロ(エミール・ハーシュ)は相棒を連れて、マンションの自室にこもる元警察署長の頑固な老人レイ(メル・ギブソン)に避難勧告をしに行く。しかし、彼は部屋から出ようとせず、コルディーロたちも動けないでいると、ついにハリケーンが襲来。さらに、建物のどこかに隠された推定5500万ドル(約57億円)の価値がある物を狙って、武装した強盗団が侵入してきてしまう。カオス状態に陥ったマンションで、コルディーロ&レイたちと強盗団との生き残りを懸けた戦いが勃発する。
栄光と転落…紆余曲折な映画人生
ギブソンと言えば、俳優としてはもちろん、主演も務めた『ブレイブハート』(99)や残酷描写が物議を醸した『パッション』(04)、第二次世界大戦期に武器を持たないことを貫いた兵士の実話を描いた『ハクソー・リッジ』(16)と、監督としてもその手腕が高く評価されてきた。その一方で、私生活では妻だった女性へのDVに人種差別発言、飲酒運転とスピード違反による逮捕など、話題に事欠かないお騒がせな一面も。そのスキャンダラスな性分もあり、一時期は映画界から距離があったが、人生に行き詰った刑事を演じた『ブルータル・ジャスティス』(18)、ショーン・ペンと共演した『博士と狂人』(18)といった作品で、再び確かな演技力と存在感を示している。
そんなギブソンを語るうえで忘れてはいけないのが、アクション俳優としての活躍だ。世紀末的な世界で悪と戦う警官を演じた「マッドマックス」シリーズ、ダニー・グローヴァーとの凸凹刑事バディで楽しませてくれた「リーサル・ウェポン」シリーズなどで人気を確固たるものにしてきた。そして、「リーサル・ウェポン」と邦題が似ている(?)『リーサル・ストーム』が、彼のかつてのアクションスターとしての片鱗を感じさせるものになっているのだ。
頑固な老人役からにじみ出る哀愁…
ギブソンが演じるレイは、とにかく頑固で扱いづらいキャラクター。自室のイスに座ったまま動こうとしない彼は、どれだけハリケーンの危険性を説明されようとも聞く耳を持たず、コルディーロや看護師をしている娘を困らせる有り様だ。しかし、いざ強盗団がマンション内に侵入してきたことがわかると、警官だったころの経験を生かして頼れる男へと変貌する。
訳あってコルディーロの相棒の女性警官と行動をともにすることになるレイ。彼女の経験が浅いため、長年の警官生活で培われてきた判断力とリーダーシップで、襲い来る強盗団を次々と撃退していく。持病を抱えているため息は苦しそうだが、銃の扱いは手慣れたもので、老体にムチを打ちながらの肉弾戦も見せるなどかなり頑張っている。
また、素直な性格ではないため、娘に対しなかなか本心を伝えられずにいるが、物語の後半ではその気持ちが垣間見えるシーンも。哀愁漂うギブソンの泣きの演技も合わさり、エモーショナルに作品を盛り上げている。
今後は『リーサル・ウェポン5』の製作も噂されるなど、まだまだその活躍から目が離せないメル・ギブソン。まずは、相変わらずの“最終兵器=リーサル・ウェポン”ぶりを発揮している本作を観て、元気ハツラツな姿を目に焼き付けてほしい。
文/平尾嘉浩