『ノマドランド』『ミナリ』などアカデミー賞有力作が増収!LAの映画館再開で、北米ランキングに動きは?
実に1年ぶりに北米最大のマーケットであるロサンゼルスの映画館が再開。そして第93回アカデミー賞のノミネートが発表されてから最初の週末と、大きなトピックが重なった先週末。にもかかわらず、北米興収ランキングでは『ラーヤと龍の王国』(映画館&ディズニープラスプレミア アクセスにて同時公開中)をはじめ、『トムとジェリー』(公開中)、『Chaos Walking』(2021年公開)と、3週連続で上位3作品に動きが見られない結果となった。
それでもアカデミー賞にノミネートされた作品は相次いで前週から興収を伸ばしている。作品賞や監督賞の最有力と目されている『ノマドランド』(公開中)は前週比119%。助演男優賞のダブルノミネートなどサプライズを演出した『Judas and the Black Messiah』は同148%。
なかでも、もっとも大幅な伸び幅を見せたのは、現時点で賞レースの2番手を追走している『ミナリ』(公開中)の同231%。『プロミシング・ヤング・ウーマン』(夏公開)も同216%と劇場数の増加に比例して急浮上。いずれも4月25日(日)の授賞式前後まで安定した興行をつづけることになるだろう。
新作タイトルでは、ベネディクト・カンバーバッチが主演と製作総指揮を務めたスパイスリラー『The Courier』が4位に初登場。キューバ危機の時代に活躍した実在のスパイの半生が描かれていく物語で、メガホンをとったのは「ホロウ・クラウン/嘆きの王冠」のドミニク・クック監督。昨年のサンダンス映画祭でお披露目された同作は、批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からも観客からも高評価を獲得している。
また12位には、3年前に製作されてお蔵入り状態だったジョニー・デップ主演の『City of Lies』も初登場した。
3週連続ナンバーワンとなった『ラーヤと龍の王国』は、北米興収2000万ドルを突破。しかし同作の興行不振などをきっかけに、先日ディズニーは今後の上映作品のスケジュールについて大幅な変更を発表。『ブラック・ウィドウ』や『クルエラ』といったサマーシーズンの話題作を劇場と同時にディズニープラスのプレミアアクセスで配信されることが決まり、ピクサーの『あの夏のルカ』は劇場公開が見送りに。
現在も休業を続けている北米第二の映画チェーン「リーガル・シネマズ」が4月から再開されることが発表されるなど、着実に復活への歩みを見せている北米映画界だが、まだいくつもの課題が山積みになっているようだ。
文/久保田 和馬