注目のコメディ俳優アンディ・サムバーグが脚本にベタ惚れ!『パーム・スプリングス』の風変わりなおもしろさ|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
注目のコメディ俳優アンディ・サムバーグが脚本にベタ惚れ!『パーム・スプリングス』の風変わりなおもしろさ

コラム

注目のコメディ俳優アンディ・サムバーグが脚本にベタ惚れ!『パーム・スプリングス』の風変わりなおもしろさ

目が覚めたら、今日もまた同じ一日の繰り返し…。日常って退屈だよねという話ではない。映画『パーム・スプリングス』(公開中)の主人公ナイルズとサラは、眠るか死ぬかする度に同じ日の朝にリセットされる“タイムループ”から抜け出せなくなってしまったのだ! 

タイムループを扱った映画やドラマは少なくない。代表格に1993年のロマンチックコメディ『恋はデジャ・ブ』があり、トム・クルーズ主演のSFアクション『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)、タイムループ+ホラー+青春コメディの『ハッピー・デス・デイ』(17)など、さまざまなジャンルと結びつきながら発展を遂げてきた。『パーム・スプリングス』はそんな“タイムループもの”の最新バージョンであり、また、孤独をテーマに据えたラブコメディの最新バージョンでもある。

同じ日を繰り返す2人の恋の行方は?
同じ日を繰り返す2人の恋の行方は?

破天荒な音楽コメディ『俺たちポップスター』(16)やテレビシリーズ「ブルックリン・ナイン‐ナイン」などで知られ、本作では主演とプロデューサーを務めたアンディ・サムバーグは、『パーム・スプリングス』を「存在していないタイムループ映画の続編みたいなもの」だと説明する。

【写真を見る】アンディ・サムバーグが皮肉屋のナイルズを好演
【写真を見る】アンディ・サムバーグが皮肉屋のナイルズを好演[c]2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

「これは、普通のタイムループ映画が終わったところからスタートする物語なんだ。例えば『恋はデジャ・ブ』のビル・マーレイが、あのままループから抜けられずに千年も同じ日を繰り返していたらどうなる? 脚本を読んでから、何度もこの映画について考えていた。コメディ、SF、ラブストーリー、僕自身が妻と結婚して感じた幸福、そういったものすべてを融合させたみたいな内容で、こんなにハマる脚本に出会えることは滅多にないと思ったよ」

サムバーグが演じる主人公のナイルズは、知人の結婚式で訪れた砂漠のリゾートで、タイムループにはまってしまった男だ。もう記憶をたどれないくらい長い間、同じ結婚式に出席し続けている。ループを抜け出そうとあらゆる手を尽くしたが、もうムダな努力はやめて気楽に生き続けるしかないと諦めている。ところがひょんなことからもうひとり、花嫁の姉サラも同じループにとらわれたことで、ナイルズの退屈な日常が変わり始める――。

才気あふれるクリエイターとしても注目を集めているサムバーグ
才気あふれるクリエイターとしても注目を集めているサムバーグ[c]2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

陽気なお調子者なようで、心の奥に虚無を抱えたナイルズ役はコメディスターのサムバーグにとって新たな挑戦だったという。「ユーモラスなシーンも多いけれど、ただ大笑いする映画とは違う。とても深いレベルの感情を掘り下げる作品だから、演技のギアを変える必要があった。今までやったことがない役だけど、自分にはできるという自負もあったし、観客をこの世界へと案内する役割が果たせると思ったんだ」


サムバーグが共演相手として選んだのは、『ONCE ダブリンの街角で』(06)のブロードウェイミュージカル版の主演など、さまざまな舞台、ドラマ、映画で活躍してきたクリスティン・ミリオティ。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)ではレオナルド・ディカプリオの最初の妻を演じていた個性派だ。

ひねくれたヒロインのサラ役にクリスティン・ミリオティ
ひねくれたヒロインのサラ役にクリスティン・ミリオティ[c]2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

サムバーグは、たまたまドラマシリーズ「ファーゴ」のシーズン2とNetflixのドラマ「ブラック・ミラー」の「宇宙船カリスター号」を観ていて、ミリオティに着目したという。「どちらの作品にも彼女が出演していたんだけど、まったく違う演技をしていて、一体この女優は誰なんだ!って思ったんだ。地に足がついていて、ドラマチックで、同時にイカれていて最高に可笑しい。彼女と共演すれば、僕だって演技が上手く見えるに違いないと思って声をかけたよ(笑)」

実際、ロマンチックコメディという形式においては、主演のふたりのマッチングが作品の成否を決めるといっても過言ではない。日本での知名度はまだ低いかも知れないが、本作の演技でゴールデングローブ賞候補になったサムバーグの陽性な親しみやすさと、タイムループ以上にメンタル面でトラブルを抱えるサラを妙演したミリオティのコンビのバランスが絶妙で、この凸凹なカップルを応援せずにはいられなくなる。

タイムループに“慣れた”2人が、開き直って遊び暮らすさまも楽しい!
タイムループに“慣れた”2人が、開き直って遊び暮らすさまも楽しい![c]2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

また、ほぼ無名の存在ながら共同でオリジナル脚本を生み出したマックス・バーバコウ監督と脚本家のアンディ・シアラも、本作で大ブレイクを果たした注目の才能。ふたりにとっての初長編だけにやりたいことがあふれていて、タイムループという枠組みをフル活用しながら、90分の上映時間にダンスから量子物理学、太古の恐竜までさまざまな要素をこれでもかと詰め込んでみせた。そして作品の核には深い人間洞察があるので、シニカル目線の観客も本作の魅力に陥落されるに違いない。昨年のサンダンス映画祭では同映画祭史上の最高額(当時)で配給権が売れるなど業界注目度の高さも納得の、まさに今が旬のエンタメをご覧いただきたい。

取材・文/村山章

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