品川ヒロシ監督が最新作『リスタート』を主演のEMILYと語り合う!クランクアップの瞬間、品川が流した涙のワケとは?
「撮影前に監督が“魔法の言葉”をかけてくれたから、撮影では心から泣くことができました」(EMILY)
ーーEMILYさんは初めて演技に挑むなかで、特に印象に残っているシーンはありますか?
EMILY「中野英雄さん演じる義理の父親と橋の上で話すシーンで、未央が泣く場面があったのですが、最初の引きのカットから全力で泣きすぎてしまって、いざ顔をアップで撮るという時に涙が出なくなってしまったんです。やっぱり素人なので、ペース配分もせずに全力で泣いてしまって…時間もないのに意気消沈してしまったんです。そうしたら監督が『ちょっとみんな、一回離れて』と私と監督だけの時間を作ってくれたんです。おかげで、そのあとの撮影では心から泣くことができました。あの時は中野さんの顔が“お父さん”にしか見えなかったし、中野さんも『あの時の俺は、役者、中野英雄じゃなくて“未央のお父ちゃん”だったわ』と言ってくださいました。たぶんあの瞬間、未央と自分が一気にリンクしたんだと思います。母親役の黒沢あすかさんからも『スイッチ入ったわね。あなた、顔つき変わったわよ』って言われました(笑)」
品川「そのシーンの撮影中、僕はEMILYの目線の先、つまり中野さんの後ろにいたんです。EMILYとはセリフ合わせも2人でしたし、ここまで一緒に乗り越えてきた道のりがあるから『オレが目線の先にいればきっと泣くだろう』と思って。EMILYが泣いた時は『オレが泣かしたった』ぐらいの気持ちだったんですけど、実際は中野さんがEMILYの良さを引きだしてくれただけで、僕のことは一切目に入ってなかった(笑)」
EMILY「(笑)。でもそれは、撮影前に監督が“魔法の言葉”をかけてくれたからです。あの言葉をかけてくれた瞬間、私のスイッチが入ったことに監督が気付いて『このままいこう!』ってすぐに撮影を再開してくれたから泣けました」
「『ここから這い上がろう』という気持ちはいまみんなが持っている感情」(品川)
ーー “コロナ以前”に製作された当時といまでは『リスタート』というタイトルの意味も少し違って受け取られる気がします。
品川「公開自体も、新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期になりましたし、エンタメ界が大打撃を受けているじゃないですか。そこも作品とリンクしていると思います。ドン底とは言わないまでも、『ここから這い上がろう』という気持ちは、いまみんなが持っている感情だと思うし」
EMILY「『コロナ禍に撮っていたんじゃないの?』と思うぐらい、現実とリンクしてますよね」
ーー最後に、これから映画をご覧になる方々へメッセージをお願いします。
EMILY「ドン底から這い上がる未央を見て、いまドン底にいる人は『ちょっと頑張って這い上がってみようかな』と思ってほしいし、夢を追っている未央の姿を見て『夢を見たっていいじゃん!』という気持ちになってほしい。観た人が『自分も一歩踏みだせたらいいな』と思ってくれたらうれしいですね」
品川「いま世の中的には、スキャンダルを起こした未央のような “一度失敗した人”を許さないみたいな雰囲気もあるじゃないですか。そんな世の中に一石を投じる…と言ったら大げさですけど、みんなが勇気をもらえるような、そんな映画になればいいなと思います」
取材・文/落合由希