「全裸監督」武正晴総監督が明かすロケ撮影へのこだわり「80年代なら猥雑な新宿、90年代は渋谷をメインに」
「風景を探して、そこで映画を撮るのはやっぱり楽しい」
武監督自身は「セットでの撮影は好き。昼のシーンも夜のシーンも撮れるし、映画的な発想がしやすいんです。映画を撮っている感じがしますよ」と断ったうえで、「でも、ロケーションでなければ撮れない風景もあるし、思い描いている場所を探しにいくすばらしさがありますね」としみじみ語る。
「風景の中にセットを建て込むのが理想なので、全国をロケハンして『ここに街を作るんだ!』みたいなことをよくやっていた今村昌平監督が羨ましかった。僕も助監督時代に日本中を駆けずり回って、『ここなら撮れるかな?』『こういう撮り方もできるかな?』って考えながら各地を巡るロケハンはすごく好きだったし、風景を探して、そこで映画を撮るのはやっぱり楽しいです」。
シーズン2の最終話でも、絶好のロケーションが、物語をよりドラマチックにしている。「村西と川田が話しているシーンで江ノ島の夕景が美しく撮れたんです。太陽が一瞬だけ出て、海が綺麗に輝いて…。わずかな時間でワンチャンスしかなかったのですが、すごくいい夕陽が撮れた。たしか、あの日は山田さんの誕生日で、『こういう日にこの太陽を呼び寄せる山田さんはやっぱりスゴい』ってみんなで語り合ったのを覚えています。村西と川田が対峙する長い芝居でしたけど、すごく重要なシーンだったし、それにふさわしい最高の画が撮れたと思います」
「世間がなんと言おうと、魅力的な人物にしてあげないといけない」
話を聞けば聞くほどおもしろくて前のめりになってしまうが、「全裸監督」はこのシーズン2でついに完結。主演の山田孝之も「やりきった」と公言している。だが、武監督の思いは少し違うようだ。
「山田さんは出し切ったと思いますよ。ビックリするぐらいにね」と称えながらも、「実は僕が一番やりたかったのはこのシーズン2のあと」と訴える。えっ、このあと?「そう。原作(本橋信宏著『全裸監督 村西とおる伝』)の本質だし、肝になるところ。アダルトビデオの監督と女優の夫婦が子どもを慶応幼稚園に入れてバッシングを受けるところから始まるこのパートは、村西が本当に苦しくなっていく“失われた10年”と言われている部分です。僕はそこに、ものすごく感動したんです。村西は多額の借金を返しながら、どうやって子どもを育てていったのか?成功と転落のあと、今度は息子がどうなっていったのか?を描いたら、『ゴッドファーザー』三部作みたいじゃないですか(笑)」。
そこで、武監督が加えたひと言は映画を生業にしている人ならではの言葉で、胸に響いた。「僕たちは社会から見たらマイノリティな男を主人公にした。主人公に選んだからには、世間がなんと言おうが、ラストシーンでは最大に盛り上げて魅力的な人物として救ってやるのが僕たちの使命です。村西にはまた会いたい気もするので、もし次があるなら、今度はそこをやりたいですね」
MOVIE WALKER PRESSでは、「全裸監督 シーズン2」のロケーション撮影を陰から支えたフィルムコミッションの裏話についても準備中だ。
取材・文/イソガイマサト
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