原作ゲームファンのジェームズ・ワンが明かす、『モータルコンバット』を完全実写化した秘訣
「サブ・ゼロとスコーピオンのライバル関係こそ、絶対に描きたいと思った部分でした」
原作ゲームが大きなブームを巻き起こしていた1995年、のちに「バイオハザード」の実写映画化シリーズを成功へと導くポール・W・S・アンダーソン監督によって初めて映画化されると、同年の北米年間興収ランキングでベスト20に入るスマッシュヒットを記録。しかし1997年に作られた続編は批評、興行の両面で失敗に終わり、シリーズは長い眠りについた。前述の通り、その2作のファンであることを公言するほど「モータルコンバット」の世界観に魅せられているワンは「技術の発展のおかげで、25年前には難しかったことに挑戦できるようになった」と、再映画化することの意義を語る。
「興味深い登場人物たちがどこから来たのかを見せることなどがその一例で、世界観を表現するには単に物質的なセットを作ることだけではなく、雰囲気や空気感、そしてその世界に生きるキャラクターたちが重要になってくる。この映画では人間界と空想上の世界である魔界という2つの世界を作りあげました。人間界は親しみ深いものですが、魔界のように非常にファンタジックな世界を作るうえでは、観客が彼らの存在する環境に共感を持てる要素をしっかりと描く必要があると感じたのです」と、より深い部分から原作ゲームの魅力を引き出すためにアプローチしたようだ。
そのうえで特にフォーカスを当てたキャラクターというのが、原作ゲームでも特に人気の高い悪役のサブ・ゼロと、真田広之が演じるスコーピオンだという。「両者は見た目もカッコよく、興味深い力を持っている。でもより突き詰めて考えた時、彼らのバックグラウンドには人間として深みのある歴史があるということが、人々を魅了した理由なのだと思いました。そこから物語を発展させていき、この因縁のライバル関係こそ今回の映画化で絶対に描きたいと思った部分なのです」。
これまでも「ソウ」シリーズのようなスリラーから「死霊館」シリーズのようなホラー、そしてDCコミックス原作の『アクアマン』(17)に至るまでさまざまな世界観を構築し、いずれも大成功に導いてきたワン。そんなハリウッド随一のヒットメイカーが、ゲームファンも映画ファンのどちらも納得する世界観を生みだし、「映画館で観るべき最高のアクションやバトルを作りあげることで、観客を興奮させられる映画を作ることができました」と豪語する本作。その刺激的で容赦のないシーンの数々を、是非ともその目に焼き付けてほしい。
構成・文/久保田 和馬