「未来から見れば、現在も時代劇」。『サマーフィルムにのって』松本壮史×三浦直之が込めた、ものづくりへの“好き”

インタビュー

「未来から見れば、現在も時代劇」。『サマーフィルムにのって』松本壮史×三浦直之が込めた、ものづくりへの“好き”

「ものづくりは、性別を超えてほしい。それは最初から思ってました」(三浦)

――なるほど。困難性も含めての、ものづくり。だからこそ、共同制作によるクリエーションはおもしろいのかもしれませんね。

松本「ええ。それを、この子たちに体験してほしいと思ったんです」

――ハダシ、ビート板、ブルーハワイ。一応、女子3人組が中心ですが、そこに未来人を始めとする男子たちが加わることで、不思議なテイストが生まれています。いわゆるガールズ映画、というわけでもなくって。

松本「自然にそうなっていましたね。女子だけでなく、男子もいてほしかった。ものづくりは、性別を超えてほしい。それは最初から思ってました」

映画作りはまったく素人なメンバーが、高校最後の夏休みを映画作りに懸けていく
映画作りはまったく素人なメンバーが、高校最後の夏休みを映画作りに懸けていく[c]2021「サマーフィルムにのって」製作委員会

三浦「台詞を書く時に、これはハダシが言ってることだけど、例えば男子高校生が言ったとしても成立してるかな?と。そういう意識は全部のキャラクターに対して持っていましたね。女性が言っても、男性が言っても成立する台詞を書きたいなと」

――観ていると、改めて、ものづくりにおいて、性差は関係ないなと感じます。恋愛の成就みたいなことを目標にしないと、映画はこんなに自由になるのか!と。

松本「未来人が出てくると、ジェンダーとか、そういう問題でもなくなりますよね(笑)」

――そもそも、ハダシ、ビート板、ブルーハワイという名前が、ジェンダーレスですよね。女の子であることが強調されていない。特にハダシは、あらかじめ性差を超えた生命力がみなぎっていて、圧倒されます。詳しくは言えませんが、ラストは圧巻です。あのハダシだから成立したのかなと。

松本「ラストシーンのエモーションは、三浦さんが現場を信じて書いてくれたから、だなと思います」

【写真を見る】監督が「伊藤さんは、本当にスゴイ…」と漏らす、伊藤万理華のハマりっぷりを刮目せよ!
【写真を見る】監督が「伊藤さんは、本当にスゴイ…」と漏らす、伊藤万理華のハマりっぷりを刮目せよ![c]2021「サマーフィルムにのって」製作委員会

三浦「あのラストのためにも、ハダシの鬱屈から映画を始めたいと思いました」

松本「ハダシの熱量。これは伊藤万理華さんの力が大きいなと。最後まで、あの熱量が途切れない。先日、伊藤さんと対談したんですが、僕、『伊藤さん、スゴイ』しか言ってなくて(笑)。でも、それくらい伊藤さんはスゴイです」

映画館で見かけた凛太郎(金子大地)に、映画に主演してほしい!と即オファーしたハダシ
映画館で見かけた凛太郎(金子大地)に、映画に主演してほしい!と即オファーしたハダシ[c]2021「サマーフィルムにのって」製作委員会

三浦「例えば凛太郎との出逢いは、理屈を超えた『一目惚れ』なわけですが、脚本にそんなふうに書かれていても、普通、伊藤さんのようには表現できないですよね」

――はい。あのシーンもそうですが、ハダシだからそうなのだな、と納得するしかない場面がたくさんありました。ところで、ハダシのキャラクターはどんなふうに決め込んでいったんですか。

松本「言語化するのは難しいですね。こういう子が自然に映画を引っ張ってくれたらいいなと思っただけで。あんまり小手先で考えずに作った気がしています」

――先ほど、三浦さんから「未来から見れば、現在も時代劇だ」という名言がありましたが、これは映画の本質にかかわることでもありますね。

松本「映画は、音も映像もいろんなことも記録される。映画を観るということは、タイムマシーンに乗るようなことなんじゃないかと思います。このことが、今回、映画というモチーフに結びついた気がしています。本とか創作物は全部、タイムマシーンだと思うけど、映画は特にそうなのかなと。記録できるものが多いから、一番タイムマシーンに近い」


『サマーフィルムにのって』というタイトルも、“タイムマシーン”を思わせる
『サマーフィルムにのって』というタイトルも、“タイムマシーン”を思わせる撮影/河内 彩

――バイトのエピソードがありましたが、映画制作のあらゆる過程が肯定されていて、その清々しさも、持ち味の一つかなと思います。

松本「映画って、いろいろやることがあるんですよ。企画を考えて、脚本を書いて、ロケハンして、キャスティングして、美術や衣装、編集や音楽も。監督は全工程に携わるから大変なんですけど、各工程に“好き”を入れられる。自分自身、そこを楽しいと思えることは大きいかもしれませんね」

取材・文/相田冬二

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