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「六番目の小夜子」はなぜ伝説化した?「ドラマ愛の詩」が開いた“大人への扉”

コラム

「六番目の小夜子」はなぜ伝説化した?「ドラマ愛の詩」が開いた“大人への扉”

「六番目の小夜子」が問いかけた、“自分自身とはなにか”

ドラマの前半は、もっぱらミステリアスな転校生の存在によって物語がかき回されていく。そして「サヨコ」という概念に導かれるようにして友情を深めていく玲と沙世子が、見えざる“妨害者”の存在と「サヨコ伝説」のルーツを追いながら、日本のドラマ史上でも突出した緊張感と驚きに満ちあふれた文化祭のシーンに達する。そして終盤にはすべての謎の答えが明かされていきながら、いくつもの問いを投げかけてくる。サヨコとはなにを象徴していたのか、学校とは、友情とは、家族とは。そして自分自身とはなにか。

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この作品の描くテーマについて考えれば考えるほど、中学生がそれまでの人生で得た漠然とした知識や経験を自分のなかで形あるものへと変えていく作業へとつながる。しかもここで気付きを得て、大人になるための糸口を掴んだ彼らは、このドラマの数か月後に『バトル・ロワイアル』という作品をめぐる一連の出来事により、自分たちはまだ子どもであるという事実を突きつけられてしまう。そして否が応でも、この作品が提示したテーマを反芻し、自分自身とはなにか向き合う作業を繰り返していくことを余儀なくされたのである。そう考えると、早い段階からこの作品の価値が高められていったことにも頷ける。

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加藤彰彦役を演じた山崎育三郎は、ミュージカル界のプリンスとして大活躍撮影/成田 おり枝

あれから21年が経ち、気付けば今年は13番目のサヨコの年だ。いつの間にか王道のジュブナイル作品はおろか、小中学生を主体にしたドラマや映画自体がかなり少なくなってしまったように思えてならない。今回の再放送が、現代の中学生や小学校高学年ぐらいの子どもたちの目にどう映るのかは気になるところだが、これを契機にして「ドラマ愛の詩」をはじめとしたジュブナイル作品が再評価されることにも密かに期待を寄せたい。そしてなにより、14番目の年も15番目の年もサヨコが現れ、さらに次の世代へと継承されてほしい。

「六番目の小夜子」第4回から第8回は8月1日(日)午前0時36分から午前3時3分、第9回から第12回は8月2日(月)午前0時36分から午前2時34分にNHK総合にて放送。全話ともに、NHKプラスで同時・見逃し配信も実施される。

文/久保田 和馬

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