4K修復によって浮き彫りになった、1968年版『妖怪大戦争』のスゴさ|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
4K修復によって浮き彫りになった、1968年版『妖怪大戦争』のスゴさ

コラム

4K修復によって浮き彫りになった、1968年版『妖怪大戦争』のスゴさ

いよいよ13日より公開となった『妖怪大戦争 ガーディアンズ』。今作にも出演している神木隆之介が主演を務め、大ヒットを記録した2005年の『妖怪大戦争』もまだ記憶に新しいところだが、これら2作の原点となっているのが1968年の『妖怪大戦争』である。実に半世紀以上前に作られた映画であるものの、こうして昭和から平成、令和と時を超えて新たな作品が作られるのは、ほかの映画にはないおもしろさが詰まっているからだ。現在、角川シネマ有楽町にて開催中の「妖怪・特撮映画祭」では4K修復版も上映されている、本作の魅力をひもといてみよう。

4K修復によって鮮やかに蘇った1968年版『妖怪大戦争』の魅力を再発見!
4K修復によって鮮やかに蘇った1968年版『妖怪大戦争』の魅力を再発見![c]KADOKAWA1968

まず、1968年の『妖怪大戦争』は、先に公開された『妖怪百物語』、翌1969年公開の『東海道お化け道中』とあわせて、「大映妖怪三部作」と称されている。1960年代後半に水木しげる作品などに由来する“妖怪ブーム”が巻き起こり、三作はそのブームに乗りいっそう盛り上げるかたちでヒットを記録。いずれも妖怪たちが大挙して登場する“百鬼夜行”のシーンが含まれている点が共通しており、もっとも娯楽色が強いのが『妖怪大戦争』だ。妖怪たちはキュートかつユーモラスで、公開時にはプラモデルが子どもたちの間で大人気になったというのもうなずける。

ストーリーは勧善懲悪の非常にわかりやすいもの。4000年の眠りから目覚めた古代バビロニアの吸血妖怪ダイモンが、江戸時代の日本に襲来。役人を殺して憑依し、子どもたちにも魔の手を伸ばす。河童や油すまし、雲外鏡、ろくろ首ら日本妖怪たちは、異国妖怪に好き放題させないとばかりに、力をあわせて立ち向かう。とにかく強くて邪悪な西洋妖怪のダイモンと、江戸っ子でおっちょこちょいな河童、関西弁でリーダー格の油すまし、子どもたちに寄り添う二面女ら、どこか頼りないけどかわいらしい日本妖怪、二者の対比が際立っており、いつしか日本妖怪を応援したくなってしまうはずだ。上映時間は79分とコンパクト。シンプルな物語にテンポの良さも相まってあまり古臭さは覚えない仕上がりだが、今回作られた「4K修復版」によってさらに、いま観ても新しさを感じられるようになっている。


【写真を見る】河童をはじめ、インパクト大のかわいい妖怪が大集合!
【写真を見る】河童をはじめ、インパクト大のかわいい妖怪が大集合![c]KADOKAWA1968

4K修復は、35mmのオリジナルネガフィルムを元素材として、IMAGICA Lab.にて4K解像度でスキャン。キズや汚れを除去しつつグレーディング(色味調整)を実施したもの。当時の撮影所を知る宮島正弘撮影監督が修復を監修した映像は、近年撮影されたのではと思えるほどの鮮やかさで、実に見事だ。旧マスターでは青っぽかった部分も色鮮やかになったほか、映像のコントラストもはっきりとし、妖怪たちの跋扈する夜の闇が締まった黒味に。ダイモンのぎらぎらとした鋭い眼光(『大魔神』三部作のスーツアクターを務めた橋本力のものだ)もいっそう鋭さを増している。

そして、4K画質でより明瞭になったのが、作り物とは思えないセットのクオリティや、照明などの撮影技術のすごさ。さすが黒澤明の『羅生門』(50)や溝口健二の『雨月物語』(53)を生んだ大映京都撮影所制作とうなってしまう。多重合成の特殊撮影によって生みだされた、朝焼けのなかを妖怪たちが去っていくラストの百鬼夜行シーンは、幻想的でより美しく感じられ、まるで青春ムービーを観たかのような清々しい鑑賞後感を味わえるだろう。これこそ、まさに大人も子どもも楽しめる、王道エンタメムービーだ。

Blu-rayほかApple TVアプリの「MOVIE WALKER FAVORITE」チャンネルでも観賞できる
Blu-rayほかApple TVアプリの「MOVIE WALKER FAVORITE」チャンネルでも観賞できる[c]KADOKAWA1968

この1968年版の『妖怪大戦争』4K修復版は、もちろん「妖怪・特撮映画祭」の上映で映画館の大スクリーンで堪能するのが一番だが、観に行けないという人もご安心を。8月18日(水)には単品Blu-rayが発売、9月24日(金)に大映妖怪三部作を収録した「妖怪封印函」4K修復版 Blu-ray BOXが発売。さらに、Apple TVアプリの「MOVIE WALKER FAVORITE」チャンネルでも配信中。様々なデバイスで4K画質の本作が見放題となる。『妖怪大戦争 ガーディアンズ』とあわせて、この機会にぜひ旧作も楽しんでみては?

文/編集部

<チャンネル・サービス概要>
プラットフォーム:Apple TVアプリ
チャンネル名:MOVIE WALKER FAVORITE
視聴可能作品:KADOKAWA邦画・洋画・TVドラマ
サービス:月額600円(税込)/無料トライアル14日間/同時アカウント数6
    フルHD~4K画質/テレビ・スマホ・PC対応/ダウンロード機能あり
URL: https://favorite.moviewalker.jp

「妖怪・特撮映画祭 劇場用プログラム」「妖怪・特撮映画祭 劇場用プログラム」
「妖怪」三部作の4K修復版、「大魔神」三部作の4K修復版、そして昭和ガメラシリーズなど、アナログ特撮の魅力にあふれた作品群を一挙上映する「妖怪・特撮映画祭」。その開催を記念して、公式パンフレットを発売。妖怪、幽霊、怪獣、宇宙人らが登場する上映作品の解説に加え、4K修復監修を務めた宮島正弘カメラマンに聞く裏話や、豪華執筆陣による特撮愛あふれる寄稿、インタビューなどを収録。
発売中 定価:1,500円(10%税込)
ムービーウォーカー刊


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