ライアン・レイノルズ主演『フリー・ガイ』が北米初登場1位!“45日間の劇場独占公開”の成否は?
拡大公開の新作タイトルが3本公開された先週末(8月13日から15日)の北米興収ランキングは、「デッドプール」シリーズでおなじみのライアン・レイノルズが主演を務めた『フリー・ガイ』(日本公開中)が初登場No. 1を獲得した。
オンラインゲームのモブキャラとして平凡な日々を繰り返す主人公が、新しい自分に生まれ変わるために立ち上がるというユニークな設定の『フリー・ガイ』。4165館で公開され、初日から3日間の興収は2836万ドル。これはデルタ株の感染拡大によって客足が減少していることを受けて低く見積もられていた予測を上回る数字。また、同じ「20世紀スタジオ」作品としてパンデミック前の昨年2月に公開された『野性の呼び声』(20)のオープニング成績も上回る好スタートだ。
コロナ禍における新たな映画興行のかたちが模索されるなか、この『フリー・ガイ』とマーベル・スタジオの最新作『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(9月3日公開)が「45日間の劇場独占公開」となることがディズニーから発表されたのは今年の5月。『クルエラ』や『ブラック・ウィドウ』で展開してきたディズニープラスを使った戦略がさまざまな波紋を呼んでいることは周知の通りであり、それは興収面でも顕著にあらわれている。世界的に感染拡大をめぐる情勢が一進一退を繰り返しているとあって、本作ではじまる新たな戦略の成否はまだ定めきれない部分が多いが、最初の関門であるオープニング週末に関しては、とりあえず合格ラインに達したといえよう。
一方、2位に初登場を果たしたのは、2016年のサマーシーズンの終わりに公開された『ドント・ブリーズ』の続編となる『ドント・ブリーズ2』(日本公開中)。前作のオープニング興収が2641万ドルだったのに対し、ほぼ同じ公開規模で1062万ドルとやや苦いスタート。また4位にはジェニファー・ハドソンがアレサ・フランクリンを演じる『リスペクト』(11月5日日本公開)がランクイン。こちらも公開規模的には物足りない出足となったものの、ハドソンの演技に絶賛が集中。今後賞レースが本格化するなかでさらに注目度を増していくはずだ。
賞レースといえば、前週の『Annette』につづいて先週末にも注目作の限定公開がスタート。日本でも好評を博したフランス映画『エール!』(14)をリメイクした『CODA』だ。聴覚障害者の家族のなかで育った健聴者の少女を主人公にした同作は、今年1月に行われたサンダンス映画祭で審査員賞と観客賞、監督賞など4冠を制覇。サンダンス映画祭でプレミア上映された作品としては過去最高額となる2500万ドルで、Appleが配給権を獲得したことが大きな話題を集めていた。
公開館数や興行収入、またApple TV+での視聴数などは発表されていないが、批評集積サイト「ロッテン・トマト」では批評家の96%、観客の95%から好意的評価を獲得。下馬評通りの高い温度感で迎えられており、監督のシアン・ヘダーや主演のエミリア・ジョーンズ、そして主人公の母を演じるマーリー・マトリンへの熱烈な賛辞も相次いでいる。“リメイク映画は評価されない”というアカデミー賞のジンクスを破ることができるのか、楽しみなところだ。
文/久保田 和馬