【ミニシアターランキング】名匠ペドロ・アルモドバルの新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が2週連続1位!2月7日~2月9日の成績を紹介
2月7日から2月9日までのミニシアターランキング(公開30館以下スタートの作品が対象)が興行通信社から発表された。今週も、名匠ペドロ・アルモドバルの新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(公開中)が2週連続で1位に。『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(公開中)も3週連続2位に輝き、次々に公開されるホラー映画たちを抑え快進撃を見せているのも印象的だ。そんななか、ランキング上位に新たな2作品が飛び込んできたのも見逃せない。4位の『ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女』(公開中)は内容をストレートに伝える衝撃的なタイトルと、それが実話というところが観客の動員につながったと思われる。一方、4位の『ヒプノシス レコードジャケットの美学』(公開中)は、70代を中心に、人気バンドやアーティストたちのアルバムやポスターを手掛けたイギリスのデザインアート集団「ヒノプシス」の創作の秘密に迫ったドキュメンタリー。音楽ファンを中心としたコアなファンが映画館に足を運んでいるに違いない。
【ミニシアターランキングトップ5】(2月7日~2月9日)
1位『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(先週1位→)
2位『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(先週2位→)
3位『ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女』(NEW)
4位『ヒプノシス レコードジャケットの美学』(NEW)
5位『Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり』(先週5位→)
初登場3位の『ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女』は、ナチス支配下のドイツを舞台に、自分が生き延びるために同胞たちをゲシュタポに売ったユダヤ人女性、ステラ・ゴルトシュラークの姿を実話をベースに描いた過酷で悲痛なヒューマン・ムービー。『水を抱く女』(20)で第70回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞したドイツのパウラ・ベーアが、アウシュビッツへの移送を逃れるためベルリンに潜伏していたユダヤ人たちの逮捕に手を貸す勝気なステラを力強い眼差しで熱演!愚かな決断をした彼女は終戦後、ユダヤ人の仲間によって裁判にかけられるが、ではどうすればよかったのか?『ぼくは君たちを憎まないことにした』(22)のキリアン・リートホーフ監督によるそんな問いかけが、本作を観た観客一人一人の胸に響く。残酷さが招く悲劇…善悪だけでは裁けない深いテーマに関心を寄せる人が多いということを、今回の順位は如実に表わしている。
4位の『ヒプノシス レコードジャケットの美学』は、ピンク・フロイドを皮切りに、ジェネシス、レッド・ツェッペリン、ポール・マッカートニーといった70年代を代表する人気アーティストたちのカバーアートを手掛けたデザイン集団の全貌に迫ったドキュメンタリー。1968年に「ヒプノシス」を共同で創設したストーム・トーガソンとオーブリー・“ポー”・パウエルのインタビューを始め、カメラマンやグラフィックスタッフ、レジェンドアーティストらの証言や貴重な写真の数々と共に、いまもなお音楽史に輝くアルバムジャケットやツアーポスターのデザイン創作の真相に迫っていく内容は目が離せない。アートの域にまで迫ったLPのデザインを思い出しながら、当時を懐かしむファンから70年代に憧れを抱く若い観客まで、幅広い世代に支持されているのだろう。
驚くべきは『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の3週連続2位の座に君臨する爆走ぶりだ。なぜ、新人監督、近藤亮太によるローバジェットのホラームービーがこんなに息の長いヒットを続けているのか?その理由は以前にも書いたが、今回はそこをさらに詳細に分析してみたい。まずは演劇集団「コンプソンズ」の主宰でもある劇作家で、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(23)の脚本も妹の金子由里奈監督と共に手掛けた金子鈴幸が近藤監督の原案を元に手掛けた脚本がとにかく恐ろしくて秀逸。主人公、敬太の幼い弟が失踪した施設が何故か何度探しても見つからない。施設があったはずの山のおぞましい秘密がやがて明かされるという展開にも目をみはるし、主人公の同居人、司(平井亜門)が霊が見える能力を持っているという仕掛けを周到に取り入れていて、観る者の恐怖心と怖いもの見たさの興味を同時に煽る。
さらに『福田村事件』(23)、『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(23)、『プロミスト・ランド』(24)などの話題作に次々に出演し、待機作の『逃走』(3月15日公開予定)では古舘寛治とW主演を果たした若手の実力派俳優、杉田雷麟が敬太の恐怖と拭いきれない過去の後悔を生々しく体現し、まがまがしい現象に真実味を持たせている。引きの長回しによる、役者のセリフをしっかり聞かせる堂々たる演出にも瞠目させられる。敬太に過去の恐ろしい話を聞かせる民宿の息子の佇まいや喋り方はそのなかでもとりわけ絶妙な気持ち悪さで、彼が伝えるあり得ない話が未曾有の恐怖となって観る者の背筋にこびりつく。そうした謎とリアルな恐怖が噂を呼び、気になって仕方のない多くの人たちを映画館に呼び寄せているのだろう。今週末、2月15日(土)実施の大ヒット御礼舞台挨拶では、そんな民宿の息子役を演じた吉田ヤギ(山羊)が登壇し、生で怪異を語るというスピンオフ企画も予定されており、さらなる話題を呼びそうだ。
続いて、今週末に公開予定のミニシアター映画をピックアップ!2月14日(金)には『犯罪都市 THE ROUNDUP』(22)などで知られる韓国の人気俳優ソン・ソックと新星キム・ソンチョル、キム・ドンフィらと共演で現代社会に潜む「世論操作」に強烈な疑念を提起する新感覚の犯罪スリラー『コメント部隊』が公開。同日には、家の中で消えた拳銃をめぐって家族の本当の顔が炙りだされていく様子をフランス、ドイツ、イランの合作で描き、第77回カンヌ国際映画祭審査員特別賞に輝いたサスペンススリラー『聖なるイチジクの種』も登場!この2作が次のランキングの新たな台風の目になるのは間違いない。
公開規模は小さいものの、映画ファンに愛されて続け話題性の高い良質な映画作品を鑑賞できるミニシアターに足を運んでみてはいかがだろうか。現在、全興連ミニシアター支援プロジェクト「#ミニシアターへ行こう」では、応援したい映画館の魅力を紹介してくれる公式アンバサダーを募集中。自身のYouTubeチャンネルやSNSアカウントを通じてミニシアターを紹介し、劇場救済に協力してもらおうという試みとなる。応募条件等詳細は公式アンバサダー募集ページをチェック!
文/イソガイマサト
詳細:https://moviewalker.jp/special/minitheater/
●#ミニシアターへ行こう 公式アンバサダー募集ページ
詳細:https://reg18.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ocnf-maqfkc-83d9b2cf8fbc22ac3cabe97c4e047659
●ミニシアター支援プロジェクト ハッシュタグキャンペーン
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詳細:https://moviewalker.jp/special/minitheater/
ミニシアター支援プロジェクトに関するお問い合わせ:全興連ミニシアター支援事業運営事務局(株式会社ムービーウォーカー内)minitheater@moviewalker.co.jp