King & Prince永瀬廉がダーティな新境地、『真夜中乙女戦争』撮影現場レポート!「最初から最後まで“私”の変化を見てほしい」
さらにクランクアップ当日に行われたのが、物語の序盤で特に印象的なシーン。“私”が大学の講義後、いかにこの時間が自分にとって意味がなくつまらないかを、一人壇上の教授に向かって抗議するシーンだ。某大学の大教室で撮影されたこの重要なシーンには、多くの学生エキストラが集まり、永瀬自身も撮影の数日前に「最後にこのシーンが残っていて、どんどん不安が溜まっています(笑)。セリフは頭に入ってるんですけど…」と吐露し、終始緊張した面持ちを見せていた。
早口かつ長台詞で、教授に淡々と啖呵を切る難しいシーンに、段取りが終わったあとも、一人で集中し小声でセリフの練習をしている永瀬。そして監督の威勢のいい「よーい、スタート!」という声が響き渡り、本番が始まる。暗いまどろんだ目の無機質な表情でスタスタと教壇に向かって歩いていく“私”。その後、肝となる長台詞のシーンは、何度も二宮監督と意見を交わしながら試行錯誤を続けていく。独特の緊張感が漂い、全員が固唾を飲んで見守るなか、本番でバッチリと完璧に長台詞をきめた永瀬。カットがかかった瞬間、スタッフや教室内にいたエキストラからは自然と大きな拍手が沸き起こった。
「これほどまでに完璧な解釈でここまでの演技をされるんだと思った」(原作者F)
この撮影シーンを傍でずっと見ていたのが、原作者のFだ。「感動するとか以前に、ボロボロと泣いてしまった」と告白しており「大教室の中で、聞いたこともないくらい低く冷たい声で、台本で1ページ近くあるセリフを恐ろしいほど正確なトーンで話していて…地響きのような怒り、静かに満ちあふれた怒り。これほどまでに完璧な解釈でここまでの演技をされるんだと思った」と、永瀬の一瞬の演技に深い感銘を受けていた。
コロナ禍の影響もあり、開発に非常に時間がかかったという今作だが、二宮監督自身も「こんなに脚本を書き直したことはなかったですし、自分が勝負をかけなきゃいけないような座組みを作って挑んだ作品。心のタトゥーを彫られたような映画になったと思う。これまでフィルモグラフィーを重ねて来て、これが20代最後の作品だと自分に銘打てること自体が幸せですが、この10年を通して漠然と掲げていたものを最後に撮ることができたと思っています。本当に感動的な撮影になりました」と心境を明かす。
物語では、頑張って大学に合格して上京したものの打ち込むものもなく、無気力な毎日を過ごす“私”の成長が描かれていく。淡い恋と煌めく青春、そして次第に“真夜中乙女戦争”へと巻き込まれていく過激なサスペンスと、様々な要素が織り込まれた今作。その見どころについて永瀬は「間違いなく自分と同じ世代の方々は興味をもっていただける内容ですし、どの年代の方にも刺さるものがあるんじゃないかなと、改めて思いました。卑屈で無気力な“私”が“先輩”や“黒服”と出会い、不器用なりに自分を変えようとしていく。最初から最後まで“私”の変化を見てほしいです!」と熱く語った。
取材・文/富塚沙羅