中谷美紀が明かす、女性総理を演じて得た“幸せ”「自分の代わりに凛子がすべてやってくれる」
「この役を演じることがとても幸せでした」
さて、総理になったのも束の間。凛子の打ち出す政策や方針が既存の利権に叶わないと、あの手この手で失脚を目論む怪しい動きが活発化し始める。それを冷静に収めていく凛子の手腕が鮮やかで痛快!ところが政治生命を掛けた総選挙の最中に、凛子の妊娠が発覚し――。そこからの展開にハラハラ、かつ日和との夫婦愛が心に染みる。それこそが件の“日和が腕で涙をぬぐうシーン”だが、中谷も「本当に、ガラス玉を扱うかのように大切に、感情を扱いながら演じていた」と思い返す。
「ある事情から凛子が、いよいよ進退を決めなければならなくて…。 “国民との契約なの!”というセリフが示すように、凛子は理想を実現するためひたすら走って来た。そんな彼女が1億何千万人の国民と、自分の子ども1人の命を天秤にかけなければならないなんて…。演じていても、本当に辛かったです」と眉間に力を込める。
そんな凛子の苦悩を見るにつけ、早く日本も女性が生きやすくなればいいのに、と思わずにいられない。「私自身、凛子が掲げる“働く女性が子どもを産み、育てやすい社会をつくる”ことを理想だと思いながら、結局これまでなにもアクションを起こしてこなかった人間です。自分の代わりに凛子がすべてやってくれるようで、この役を演じることがとても幸せでした」と、“幸せ”に込めた深い想いを明かした。「少しずつでもいいから変わってくれるとうれしいですよね。まずはエンタテインメントとして本作を楽しんでいただき、なにかを実生活に持ち帰っていただければありがたいです。そして、あわよくば政治家の皆さんにご覧になっていただきたいです」。
「お互いの領域を侵さない、その辺りのバランスもとてもいい」
中谷自身も、価値観の変化を告白する。「過去にはたびたび、立ち止まらざるを得ないこともありました。でも、むしろ立ち止まることで、私の場合は仕事にしがみつかなくなり、いい意味で少し肩の力が抜けるようになったんです。もちろんいまも大切に演じさせていただいていますが、仕事だけがすべてではないとも思っていて。だからこそ演じることを、楽しめているのかなとも思います」。
日本とオーストリアで半分ずつ過ごす自身の結婚生活についても、「2人の間にルールはなにもなく、とても自由。お付き合いしている当時から片鱗が感じられましたが、私は彼から母親の代理をまったく求められていないので、すごく楽なんです。家事全般も出来る時に出来るほうがすればいい、と。お互いの領域を侵さない、その辺りのバランスもとてもいい。きっと日本でも、もう少し若い世代はそうなっていくのではないでしょうか」と語る。
「ヨーロッパではそもそも家に入るという感覚はなく、結婚もわざわざしなくてもいい、と考えている人が大半です。ビザ等々の問題で私は結婚しましたが、外国人配偶者の特例を利用して夫婦別姓のままですし。当然の権利として女性も意見を述べることが出来るので、そういう点でも楽ですね」と凛子が目指す世界を、一足先に体験している様子を明かす。
大きな決断を軽やかかつ華麗に生きる中谷の姿は多くの女性の憧れだが、「実は成り行きや風任せで生きているだけ(笑)」と笑い飛ばす。「私、人にも物にも場所にも執着しないタイプなので、一つの価値観やコミュニティに閉じ込められると、非常に窮屈に感じるんです」と語る中谷美紀。そんな中谷が息を吹き込んで演じた総理、凛子が、ちょっと自信と元気を失ったいまの日本に、とびきりのパワーを取り戻してくれる。
取材・文/折田千鶴子
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