「無理です」は言いません!『マスカレード・ナイト』が描く“ホテルマンのモットー”
“人を疑う”刑事と “人を信じる”ホテルマンという真逆の立場
しかしホテルマンたちが誠心誠意作り上げた最高のひと時が、事件によって妨げられてしまう。コルテシア東京で12月31日に行われる年越しカウントダウンパーティ「マスカレード・ナイト」に殺人犯が現れるという匿名の密告が警察に届き、新田を始めとする多数の刑事たちがホテルの潜入捜査を開始したのだ。
捜査官たちはパーティの招待客500名を容疑者として扱い、その動向を常に監視することに。そして “人を疑う”刑事とは真逆の“人を信じる”ホテルマンという、まさに“水と油”な新田と山岸は、お互いの立場の違いからまたしても衝突してしまう。
前作で山岸から「ホテルマンの仕事を甘く見ないでください」と告げられた新田は、彼らのホスピタリティ・マインドを目の当たりにすることによりホテルマンに対して敬意を払うようになった。一方、 “死”のカウントダウンが始まったコルテシア東京で今度は2人にどんな出来事が降りかかり、何を学び取っていくのか。そんな成長のドラマも本作の見どころの一つとなっている。
「一歩足を踏み入れると別世界」ゴージャスで重厚感あるホテル・コルテシア東京
山岸らホテルマンたちが誇りをもって働くコルテシア東京は、重厚感あるラグジュアリー・ホテルだ。ホテルの入り口正面にはクラークが接客にあたるフロント、入り口から向かって左手にはコンシェルジェデスクがあり、山岸はこのデスクに陣取りゲストからの特別なリクエストに応えている。このコルテシア東京のロビーは前作と同じく東宝スタジオに作られたセットで、シンメトリーを意識した空間の中に機能性と優美さを兼ね備え、訪れる者を別世界へと誘う。
また、原作者である東野がロイヤルパークホテル(東京・日本橋)をモデルに「マスカレード」シリーズを手掛けたのはよく知られるところだが、マスカレード・ナイト(=仮面舞踏会)のパーティシーンはこのロイヤルパークホテルの宴会場を貸し切りにして撮影。仮面をつけた者しか入場できないパーティ会場では思い思いの仮装に身をつつんだ招待客がさんざめき、正面にディスプレイされた真っ赤なベネチアンマスクが本作にミステリアスな華を添えている。
コルテシア東京のホテルマンがゲストの出発の際に「お気をつけていってらっしゃいませ」と声をかけるのは、ホテル外では無力な彼らには幸運を祈ることしかできないからだという。新田と山岸は、お客様という仮面の上にさらに本物の仮面をかぶったパーティの参加客の中から犯人を見つけ出し、ホテルにいる人々を守ることができるのか?手に汗握る犯罪サスペンス劇とともに、ホテルマンたちが心に掲げるモットーにも注目してほしい。
文/足立美由紀