「えらいものを観た」劔樹人&犬山紙子夫妻が『空白』を通して考えた“子育て”とマスコミ報道のあり方
突然娘を失った父親の怒りが暴走していく姿を描く『空白』(公開中)。親子関係を考えさせられる映画にちなみ、4歳の娘を子育て中の劔樹人&犬山紙子夫妻を直撃。いち早く映画を鑑賞してもらうと、劔は「今後の自分の課題について、考えさせられた」、犬山は「親子関係を築いていくうえでは、この父親像はものすごくいい反面教師になります!」と熱弁する。
本作は、吉田恵輔監督のオリジナル脚本によるヒューマンサスペンス。スーパーで万引きを疑われ、店長の青柳(松坂桃李)に追いかけられた女子中学生の花音(伊東蒼)は、逃走中に車に轢かれて死んでしまう。少女の父親(古田新太)はせめて娘の無実を証明しようと店長を激しく追及するうちに、その姿も言動もモンスターと化し、関係する人々全員を追い詰めていく。本作を通して、子どもとのコミュニケーションについて改めて向き合ったという劔&犬山夫妻が、子育てのモットーをはじめ、マスコミ報道のあり方やインターネットの危険性について、たっぷりと語り合った。
「えらいものを観た。ここ数日、ずっと『空白』のことを考えています」(劔)
ーーまずは、映画をご覧になった率直な感想を教えてください。
劔「僕はだいぶ『えらいものを観た』という感じがしていて。自分自身、子どもが生まれてからは、子どもが亡くなる映画を避けがちになったりもしていたので、本作を観てからはだいぶ引きずってしまっていて…。ここ数日はずっと、どこかで『空白』のことを考えてしまっています。子どもが亡くなってからでないと、父親が変わることができなかったのかと思うと、もっと前にそうできなかったのかととても辛い気持ちになりました」
犬山「私は、人と人とのコミュニケーションをものすごく丁寧に描いている映画だなと感じました。添田は最初、怒ることでしか人とコミュニケーションを取ることができませんよね。ここまでではなくとも、添田のような父親って結構いると思うんです。映画ではそんな彼が少しずつ怒りを手放して、ほかの感情でコミュニケーションを取れるようになっていく姿が目の前に迫るように描かれていました。私は最高傑作だと思いながら、拝見していました。あと本当に、役者さんの演技がすばらしかったですね!」
ーー子どもを失うという内容は、お子さんをお持ちのお2人にとっては本当に辛いものだったと思います。怒りが暴走していく父親像に、共感する点はありますか。
劔「もし子どもがいなくなったらと思うと、確かに自分がどうなってしまうか予想ができないところがあります。僕はほとんど怒らないタイプですが、そうなった時にもしかすると狂気に変わってしまうかもしれない。マスコミが詰めかけてきたら、添田のように怒ってしまう可能性もあると思います。やっぱり僕は子どもが生まれてから、自分がだいぶ変わったと思っていて。僕たちには娘がいるので、小さな女の子をめぐる環境にかなり思いをめぐらせるようになりました。この先どういう苦労が待っているのか、どういう危険が待っているのかなどをすごく考えてしまう。劇中で、父親が学校で娘がどうしていたのか知ろうとしていく姿が描かれていましたが、僕だったら学校の様子もものすごく気にしてしまうと思います」