『DUNE/デューン』の脇を固めるジョシュ・ブローリン、ハビエル・バルデム、ステラン・スカルスガルドに独占インタビュー
フランク・ハーバートが著した原作をドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化した『DUNE/デューン 砂の惑星』(10月15日公開)。10191年、銀河系間の権力闘争に巻き込まれた青年ポール(ティモシー・シャラメ)は、「デューン」と呼ばれる砂の惑星へと移住する。
アトレイデス家の後継者ポールを中心に、本作にはそうそうたる俳優たちが出演。キャスティングはヴィルヌーヴ監督が脚本を書いた際に思い描いた通りで、彼らすべての出演合意を取り付けただけでも、ハリウッドにおける偉業と言えるだろう。アトレイデス家の戦闘隊長のガーニイ・ハレックを演じるジョシュ・ブローリン、「デューン」の自由民フレメンのリーダーであるスティルガーを演じたハビエル・バルデム、物語の“政治劇”の部分を担当するハルコンネン男爵を特殊メイクで演じたステラン・スカルスガルドの独占インタビューをお届けする。
「ポールの成長の手助けができたのは、本当にすばらしい体験」(ブローリン)
ポールを後継者として育てるアトレイデス家の腹心で、戦闘能力に長けたハレック役のジョシュ・ブローリンは、ティモシー・シャラメとの共演について、自身の子どもたちとの関係と重ね合わせてこう語る。「誰かを育てる、誰かを指導することは、自分が過去に犯した過ちに比べればとても簡単でした。ティモシーはいま25歳でとても感受性が強く、開放的で、しかも並外れた才能を持っています。彼は想像力を働かせ、どんな状況においても身を任せることができる役者です。この映画の撮影以来、私たちはずっと親しい友人であり続けています。映画の中の関係が現実の生活でも続いていくのはよくあること。映画の中でポールが成熟した大人へと成長する手助けをすることができたのは、本当に素晴らしい体験でした。そして、ティモシーの演技は筆舌に尽くし難い素晴らしいものだと思っています」。
シャラメが作品を経るごとに成長しているように、50代のジョシュ・ブローリンも進化を止めていない。2015年に公開されたマーベル・シネマティック・ユニバースの『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でサノスを演じたことがきっかけとなり、同年に『ボーダーライン』(15)への出演依頼が舞い込んだと明かす。「自分を野心的な俳優として捉え、本当に良い仕事をしたいと思っていれば、その機会が与えられた際には虚栄心を捨てることができます。そうすれば、様々なジャンルや物語に心を開くことができる。『アベンジャーズ』は、私にとってとてもすばらしい経験でした。そして、ディズニーと一緒に仕事をしたことで、ヴィルヌーヴ監督の『ボーダーライン』にも参加することができました。このような特別な出会いは、常に人間性にまで影響を与えてくれるんです。今作もヴィルヌーヴ監督の手によって、スペクタクルなSFではなく、とても人間的なストーリーになっています」。
「まるで自主制作映画を撮っているような、自由な現場だった」(バルデム)
同様に、ヴィルヌーヴ監督の演出について、惑星アラキス(別名デューン)の自由民フレメンの勇猛な戦士を演じたハビエル・バルデムは「みんな同じことを言っていたのが印象的だったんですが、僕たちはまるで自主制作映画を作っているような気がしました。というのも、みんながみんな、ドゥニのところに行って質問し自分のアイデアを話し、彼に提案したことをチャレンジしてみたりする現場だったから。自由に、自分のやりたいこと、自分が試したいことを、時間のプレッシャーもお金のプレッシャーもなくただ楽しむためにやろうとしている監督でした。それが、良い演技を引き出す真実だと思うんです。謙虚な言い方をすれば、彼はとても素敵で愛情深く、思いやりがある温かい人。そして知的でおもしろい人でした」と、最高級の賛辞を送る。
「多くのテーマを扱っているにも関わらず、鼻につかない」(スカルスガルド)
監督とディスカッションのうえで役作りをしていったと語る出演者がいる一方、スウェーデン出身で数々の作品への出演経験がある名優のステラン・スカルスガルドは、特殊メイクとスーツですっかり別人のように変貌したハルコンネン男爵の存在がすべてだという。ブローリン同様に、『アベンジャーズ』(12)などでエリック・セルヴィグ教授役を演じているスカルスガルドは、「私が思う“演技”は、セリフの中にはありません。セリフを言っていない時に、行間で私の肉体がなにを物語るのか、自分が持つすべてのツールを使って表そうとするものが演技だと思っています。ヴィルヌーヴ監督は、セリフや動きだけを見てカットをかけるのではなく、そこをきちんと見てくれる監督でした」と持論を述べる。同時に、「ですが、私は作品をあまり知的にしたいとは思わないたちなので、監督と映画学校のような議論をすることはありません」とも付け加えていた。
1965年に出版されたフランク・ハーバートの原作を映画化した本作には、様々なテーマが含まれている。スカルスガルドはテーマの羅列について、「(出身国の)スウェーデンでいうところの素晴らしいバイキング料理(ビュッフェ)のようです」と喩え、「実は、私は小説を読んでいませんでした。出演オファーを受けた時、まず脚本を読んだのですが、その後小説を読んでみると、なるほどその通りでした。母親と父親、母親と息子、父親と息子の関係、恋愛関係。それだけでなく、一族間の争いを描いた政治に関する話や、植民地主義、自然との関係、自然に依存すると同時に自然を破壊している矛盾など、多くのテーマを扱っています。しかし、この作品の良いところは、鼻につくこともなく、1つのアイデアを説くこともなく、ただ超現実的なところだと思います」と評する。
そのうえで、撮影中の秘話を一つ話してくれた。「私は自分が共演者たちに影響を与えるなんて思ってはいません。彼らが私にアドバイスを求めたことは一度もなかったし、撮影を終えたあとの食事の場では、ただのゴシップ話に終始していたから。本当は、演技についてたくさんの蘊蓄を話すことができるのに、誰も私に尋ねてくれなかったんですよ(笑)」。
取材・文/平井伊都子