小野花梨と見上愛、同世代女優が『プリテンダーズ』で演じた等身大の役を語り合う「全部が私そのものの感情でした」
子役からデビューし、2021年後期のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」も待機中の小野花梨と、デビューして3年目の新進女優、見上愛。小野が映画初主演を務めた『プリテンダーズ』(公開中)で、親友役を演じた2人は、お互いにない魅力を引き出しあったようだ。コロナ禍での撮影中断を乗り越えて撮影された本作は、若者たちの焦燥感や鬱屈感、生きづらさを切り取った青春映画の快作となったが、2人にとっても特別な作品となったという。
“Pretend”=なにかのフリをすること。引きこもりのひねくれ者の高校生、花田花梨(小野)花梨が、電車内で病人に席を譲り、感謝された時の高揚感をきっかけに、親友の風子(見上)と見知らぬ人にドッキリを仕掛け、そのリアクションを動画で撮ってSNSにアップしていく。動画がSNSで大きな反響を呼び、至福感を覚えていく花梨たちだが、やがて2人は社会から糾弾されることに。
「脚本をもらって読んだら、私の人生が文字になっている!とびっくりしました」(小野)
――小野さんにとっては初主演映画となりましたが、プレッシャーなどはありましたか?
小野「正直、プレッシャーはあまりなかったです。というのも、熊坂出監督とは私が16歳の時に『人狼ゲーム ビーストサイド』でご一緒していて、よく存じ上げていたので。撮影も、こんなにすてきなキャストの方々と、一緒に寄り添ってくださるスタッフさんがついてくれたので、みんなでどこまでやれるだろうかと、熱い想いで臨みました」
――見上さんは、メインキャスト役的なポジションの役は初めてだったそうですね。
見上「そうです。仕事を始めてまもない時期だったし、同世代の方と一緒にお芝居をするのも初めてで、ドキドキしました。でも、花梨ちゃんと共演してみて、同世代といっても考えていることも、思慮深さも私とは全然違うので驚きました。撮影が終わってから、自分も花梨ちゃんのようになりたいと思ったのですが、まさか同世代の女優さんに憧れるなんて思いもしなかったです」
小野 「いやいや…。でも、うれしいです。恐縮です」
見上「花梨ちゃんの胸を借りるというか、2歳差とは思えないくらいしっかりされていたので、10歳くらい年上の女優さんと仕事をするような感覚で、すごく甘えてしまいました」
――熊坂監督自らが書かれた脚本を読まれて、どんな感想を持ちましたか?
小野「熊坂監督から『花梨にやってほしい役がある』と言われて脚本をもらって読んだら、私がいる!私の人生が文字になっている!とびっくりしました。主人公の名前も花梨だったので、不思議な感じがしたんです。脚本には自分がいままで苦しかったことや上手くいかなかったこと、悔しかったことが描かれていて、私はこの映画で花田花梨役をやるために、あんなに苦しんで生きてきたのかとさえ思えました」
――小野さんはパブリックイメージとして、とても朗らかで明るい印象を受けますが、いろいろなことで悩んだりするタイプなのですか?
小野「そうです。昔からマイナスの感情やエネルギーを人から受けやすいタイプというか、もうダメだとなったら心がぐちゃぐちゃになって、なにも手につかなくなったり、眠れなくなったりします。さすがに昔よりは悩むことが少なくなりましたが、この社会を生き抜くことに関しては限りなく不器用なタイプです。そこはなるべく人に見せないようにはしていますが、熊坂監督には見抜かれていたんだなと感じました。花田花梨役は私そのものだったから、役作りをせずにそのまま演じていきました」
――見上さんは脚本を読んでどんなふうに感じましたか?
見上「私は、どちらかというと深く悩まずに生きてきたタイプなので、花梨ちゃんとは真逆です」
小野「そうなんです。だから2人でいろんなことを話しました」
見上「それで、世の中にはこんなに苦しんで生きている人がいて、私の大切な人もそうなのかもしれないと感じたりもしました。でも、花田花梨が『世の中を変えたい』と言ってることは、頭ではなんとなくわかるけど、本当の意味で理解はできないなとも思ったんです」
――それはどう解決していったのですか?
見上「撮影前に熊坂監督とお話をする時間をいただきました。私はいままでの人生を振り返り、やはり自分はそこまで傷ついた経験がないし、きっと私みたいに生きることが苦ではない人もいると監督に言ったら、そこを風子役にも反映してくださり、かなり役と向き合いやすくなりました。そして、風子はきっと、親友の花梨に必要とされることで、自分の存在意義を見出せたんだと気づいたんです。そういうやりとりを撮影に入る前にできたことは、本当にありがたかったです」