桐谷健太が京都国際映画祭2021「三船敏郎賞」を受賞!「不思議な縁を感じております」
「前向け、前」をキャッチコピーに、映画・アート・イベント・ワークショップの4つのカテゴリに分けてオンラインとリアルでのハイブリッド開催で行なわれた「京都国際映画祭2021」。その授賞式が17日、京都・よしもと祇園花月にて開催。これまで錚々たる俳優が受賞してきた「三船敏郎賞」を受賞した桐谷健太が「これから日本でも世界でも活躍して、人の心を震わせて感動を与えるような役者に、俺はなる!」と強い意気込みを語った。
黒澤明監督の作品をはじめ、戦後の日本映画界を代表するスター俳優として国内外でいまなお絶大な人気を誇る俳優・三船敏郎の名を冠した同賞は、2014年の京都国際映画祭スタート時に創設。三船敏郎のように国際的な活躍が期待される俳優を表彰する賞で、これまで役所広司、仲代達矢、阿部寛、浅野忠信、佐藤浩市、中井貴一、小林稔侍と、そうそうたる顔ぶれが受賞を果たしてきた。
桐谷は先日まで上演されていた舞台「酔いどれ天使」での評価が高く評価されての受賞。選考委員の三船史郎は「黒澤監督と三船敏郎が初めてタッグを組んだ『酔いどれ天使』の舞台で、かつて父が演じた松永役を桐谷さんが演じられた。大変すばらしく、若いころのギラギラした父を思い出しました。きっと父も黒澤監督も喜んでいることと思います」とコメント。
トロフィーを受け取った桐谷は「このようなすばらしい賞をいただけること、心からありがとうございます」と感謝を述べると、「ずっとどうやったら役者になれるのかわからず、その強い想いがどんどん拡大して表情に出たのでしょう。10代のころにはたくさんの人から目がギラギラしていると言われ、それが往年の三船敏郎みたいだとも言われたので、ずっと一方的に親近感を抱いておりました。不思議な縁を感じております」と想いの丈を語った。
一方、“日本映画の父”と称される牧野省三監督の名前を冠し、日本映画の発展に大きく貢献した映画人に贈られる「牧野省三賞」は、昨年『嘘八百 京町ロワイヤル』『銃 2020』『ホテルローヤル』『アンダードッグ 前編/後編』と監督作が多数公開され、Netflixオリジナルシリーズ「全裸監督」も手掛けた武正晴監督が受賞。「映画の世界に足を踏み込んで30年、こんなすばらしいものをいただけるとは想像もしていませんでした。これをひとつのエネルギーにして、これからも“映画”にこだわっていきたいなと思っております」とさらなる活躍へ意気込む。
また、未来の才能を発掘する「クリエイターズファクトリー部門」の受賞結果も発表に。審査委員長を勤めた春日太一は「223本の一次審査の段階からかなりレベルアップをしていて、候補作10本を選ぶ際にはプロの映画を審査するのと同じテンションで、ものすごく厳しく行いました」と今年の激戦ぶりを振り返る。また映画祭の総合プロデューサーを務めた奥山和由も「これまでは、これからプロになれればいいねという人が集まってましたが、今年はすでに劇場に出せるか出せないか、商売になるかどうかのスレスレのところにある作品が多かったです」とレベルの高さをよろこぶ。
そんななかでグランプリに選ばれたのは、GAZEBO監督の『AIM』。母を病気で亡くして以来引きこもりニートになって夜な夜なゲームに明け暮れる娘を心配し、ネット上でアドバイスを求める父の姿を描く短編作品。選考理由について春日は、「多くの映画祭は若い才能を評価したいもの。GAZEBO監督は43歳、実力があるのになぜまだここにいるんだと。プロになる実力があるのにチャンスに恵まれない人たちにあげるためにこの賞はできた。これが次のステップに上がる切符になれば」と年齢が決め手になったことを明かす。それには登壇したGAZEBO監督も「中年の星になれるように頑張ります」と応えた。
ほかに審査員特別賞には、マイナス20度の雪山で90分近い長編を作るという自主映画では極めてチャレンジングな姿勢が評価された高橋佑輔監督の『白獣』。優秀賞には全編ワンシーンワンカットに挑んだ光平哲也監督の『ある日、ある女。』をはじめ、堀川湧気監督の『もう一度生まれる』と小池匠監督の『消しかすの花』の3作品が選ばれた。
文/久保田 和馬