タランティーノも魅了された“90年代日本映画”!黒沢清を世界に知らしめた評論家や、山下敦弘監督らが語る
第34回東京国際映画祭(TIFF)会期中の11月2日(火)~6日(土)に開催される第18回文化庁映画週間。これは文化庁が日本映画の振興や発展の一環で行っているイベントだが、どんなことが行われているかは知らずに、素通りしていた人も少なくないはずだ。
だが、過去17回の開催では、金子修介と大森一樹の2大“ゴジラ監督”が対談する「怪獣からKAIJUへ」や、「呪怨」シリーズの清水崇監督らがパネリストの「コロナ禍を経てからの映画制作」など、ここでしか聞けないその年ならではのシンポジウムを開催。しかも誰でも無料で参加できる(事前予約制)のだから、こんな機会を逃したらもったいない!
18回目を迎える今回も、11月4日(木)16時(開場は15時30分)から丸ビルホールにて、「1990年代の日本映画から現代への流れ」にスポットを当てた興味深いシンポジウムを2部構成で実施。ここでは登壇する豪華ゲストを紹介すると共に、2つのシンポジウムの見どころを解説したい。
北野武や黒沢清が海外で高評価を獲得、“Jホラー”ブームに湧いた90年代
その前に、まずは今回のシンポジウムのテーマになる「90年代の日本映画」をざっとおさらいしておこう。バブルがはじけた後の90年代の日本映画界は、ジブリ映画や『踊る大捜査線 THE MOVIE』(98)など日本の大作娯楽映画が輝かしい興行記録を打ち出しながらも、全体的にはハリウッド映画が中心の洋画が優位だった時代。だがその一方、80年代に起きたミニシアターブームによって、チェン・カイコー、アッバス・キアロスタミ、エドワード・ヤン、エミール・クストリッツァ、マイク・リー、ダルデンヌ兄弟、アキ・カウリスマキなど作家性の強い世界の名監督の傑作が次々に公開され、多くの映画ファンを魅了していった。
そんな時代の流れのなかで、日本映画も作家性の強い作品が海外の映画祭などで話題に。『パルプ・フィクション』(94)のクエンティン・タランティーノ監督が絶賛したこともあって脚光を浴びた、北野武監督の『ソナチネ』(93)はイタリアのタオルミナ国際映画祭でグランプリに輝き、『HANA-BI』(98)はヴェネチア国際映画祭のグランプリ、金獅子賞を受賞。河瀬直美監督が最初の商業映画『萌の朱雀』(97)で日本人初のカンヌのカメラドール(新人監督賞)を獲得し、是枝裕和監督も長編初監督作『幻の光』(95)でヴェネチア国際映画祭の金オゼッラ賞(脚本賞)に輝いたのをきっかけに、世界的な評価を高めていった。さらに、黒沢清監督の『CURE』(97)もフランスの夕刊紙「ル・モンド」の映画評論家ジャン=ミシェル・フロドン氏の高評価を皮切りに欧米で注目を集め、米誌「TIME」でこれからが期待される非英語圏監督の一人に選ばれた三池崇史監督の作品群も、前記のタランティーノ監督を筆頭に海外の映画ファンを魅了し続けた。
また、北野監督のあとを追うように、撮影所での下積み経験がない、異業種の映画監督が次々に誕生したのもこの時代。俳優の竹中直人が初監督した『無能の人』(91)がいきなりヴェネチア国際映画祭の批評家連盟賞を受賞し、テレビドラマの演出家だった岩井俊二監督の『Love Letter』(95)や『スワロウテイル』(96)が多くの若い映画ファンの心をつかんで大ヒット。中田秀夫監督の『リング』(98)によって“Jホラー”ブームに火がついたのも記憶に新しい。